研究課題
がん微小環境で生じる抗がん薬耐性機序を解明することを目的に研究を実施している。がん微小環境として、がん関連繊維芽細胞、低酸素、上皮間葉転換(EMT)および、がん幹細胞に着目している。プレート表面を特殊加工して細胞が接着できない条件で培養すると腫瘍細胞はほとんど死滅するが、がん幹細胞様と考えられる一部の細胞はsphereを形成することから、がん幹細胞のモデルとして有用である。今回、このモデルを利用して実験を実施した。まず、無血清培地に20 ng/ml human recombinant epidermal growth factor (EGF) 、20 ng/ml human recombinant basic fibroblast growth factor (bFGF) を加えて ultra-low attachment dish でがん細胞を培養したところ、sphereの形成が認められた。また、この細胞群と10%血清含有培地で付着できるdishで培養した細胞群(コントロール細胞群)とで、幹細胞マーカーとして知られているOct-4やNanogの発現を比較したところ、ultra-low attachment dish で培養した細胞群でOct-4やNanogの発現亢進が認められた。さらに、sphereを形成した細胞群とコントロール細胞群との遺伝子発現を比較したところ、ABCB1、ABCC1、ABCG2といったトランスポーターの発現亢進、EFハンド型カルシウム結合性ドメインを持つS100A16の発現亢進、vaultの構成成分であるMVP(Major Vault Protein)の発現亢進が認められた。今後、がん幹細胞モデルを用いて、抗がん薬耐性機序の解明を行う。
2: おおむね順調に進展している
プレート表面を特殊加工してがん細胞が接着できない条件で培養するとsphereを形成し、幹細胞マーカーの発現が亢進すること、また、コントロール細胞群との比較で変動する遺伝子群を探索できたので概ね順調に進展している。
引き続きがん幹細胞様モデルを用いて、抗がん薬耐性機序の解明を行う。
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