研究課題/領域番号 |
18K06789
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
頭金 正博 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 教授 (00270629)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | レセプトデータ / 術後せん妄 / 副作用リスク要因 / 麻酔薬 |
研究実績の概要 |
【目的】術後せん妄(POD)の発症を予防するためにPOD発症のリスク要因を見いだすことは麻酔薬等の周術期での薬物治療の有効性と安全性を確保するためには重要であるが、PODのリスク要因に焦点を当てた多くの研究は小さなコホートグループを分析している。そこで、本研究では、我が国の保険医療の全てをカバーするナショナルレセプトデータベース(NDB)を用いて、POD発症の危険因子を探索することを目的とした。 【方法】厚生労働省保険局に研究計画書等の申請を行い、2015年8月から2016年8月までの間に研究対象とした8種類の手術を受けた患者のレセプト情報を入手した。このレセプト応報を用いてPODを発症した患者の臨床データを集計した。次に、ロジスティック回帰モデルを構築し、PODの発症に影響を与えた因子を探索した。 【結果と考察】ロジスティック回帰分析から、75歳以上、せん妄の既往、術中血液製剤の使用、緊急入院の4つの要因がPODのオッズ比を増加させることが分かった。これらの要因は、PODの発症につながる生理機能を低下させる可能性がある。また、冠動脈バイパス術では、吸入麻酔薬単独使用群のほうが吸入麻酔薬・静脈麻酔薬併用群に比べてPODのオッズ比が有意に低いことが明らかになった。このような知見は、小コホートグループを用いた以前の研究の結果と一致した。以上の知見は、POD発症を予防するためにPODの4つのリスク要因を有する患者には適切な予防措置および適切な麻酔薬の選択が必要であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナショナルレセプトデータベースを用いて医薬品による副作用にリスク要因に関する研究成果をまとめて原著論文(医療薬学 45巻 第4号 195-207 2019)に発表することができた。また、スタチン系薬剤による心血管リスクの低減効果についても、現在、解析中であることなどから、おおむね順調に進呈していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
スタチン系薬剤による心血管リスクの低減効果についての研究成果は、2019年7月の医療薬学フォーラム(広島)での発表を目指して解析中である。また、糖尿病治療薬に関する心血管リスクの低減効果についての解析も2019度中に開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実施状況は、ほぼ計画通りに進捗したが、物品購入等をできるだけ効率的に行った結果、7万円程度の未使用額が生じた。2019年度では、論文作成に伴う論文掲載料や学会発表のための旅費の増額が見込まれるため、2018年度の未使用額を含めて執行する予定である。
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