研究課題/領域番号 |
18K06790
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
森本 かおり 東北医科薬科大学, 薬学部, 講師 (90401009)
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研究分担者 |
荻原 琢男 高崎健康福祉大学, 薬学部, 教授 (80448886)
石井 敬 東北医科薬科大学, 薬学部, 助教 (00735714) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | デキストラン / 多剤耐性 / EPR効果 / ABCトランスポーター / Drug delivery system |
研究実績の概要 |
Fluorescein蛍光標識したdextran (分子量4000, FD4)が、ABCB1-, ABCC2-, ABCG2-を高発現するSf9-ベシクルにエネルギー依存的に取り込まれたという当研究室の実験結果より、dextran (Dex)が各種多剤耐性関連輸送体を一括阻害できる可能性を考案した。Dexは生体適合性に優れ、細網内皮系からも回避可能であり、生分解性にも優れるため、EPR効果を期待したDDSが研究の途にある。そこで、Dexに多剤耐性関連輸送体(ABCB1, ABCC2, ABCG2)の同時阻害効果が存在するならば、Dexあるいはその修飾体を多剤耐性輸送体克服能を兼備させたDDS基材として利用できる可能性があると考え、その可能性を探る目的で研究を推進している。 ABCB1, ABCC2, ABCG2がDexを輸送するか、FD4を基質として各種輸送体を高発現するSf-9細胞膜ベシクルへの取り込みを検討した。エネルギー依存的な取り込みが確認されたが、各輸送体を発現しない対照ベシクルにおいても同様のエネルギー依存的な取り込みが認められ、Sf-9に元来存在する輸送系による非特異的な取り込みである可能性が高いと考察された。 そこで、Dexは各輸送体の基質ではないが、阻害剤として機能する可能性について検討を加えた。MDR1-, ABCG2- 高発現 Sf-9細胞ベシクルへの各種特異的蛍光基質の取り込みの阻害実験を行ったところ、4 kDaのDex(1 mM)が一部あるいは完全な阻害効果を有することを確認した。また、ABCB1高発現細胞であるLLC-GA5-Col150細胞を用いた特異的蛍光基質rhodamine123 (Rho) の取り込み実験においても、4kDaのDexはABCB1により低下したRhoの細胞内蓄積量を対照細胞レベルまで回復させることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
病気療養のため1年間休職したため、当初の予定からは大幅に遅れている。予定を組み替えるなど対策を取り、仮説の検証を急ぎたい。
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今後の研究の推進方策 |
ABCB1, ABCC1, ABCG2の高発現ベシクルを用いた特異的基質輸送へのD4の阻害効果、各輸送体高発現細胞への各特異的基質の取り込みに対するD4の阻害効果についてMDR1, ABCC1, ABCG2についてデータを収集する(ABCB1については収集済み、ABCG2についてはベシクルのみ収集済み)。さらにdextranの分子量依存性、濃度依存性についても検討を加える。以上により、Dextranが多剤耐性関連輸送体の一括阻害効果を有するかどうか、またその場合、EPR効果の期待できる分子量範囲でも同様の効果が得られるか、検討を加える予定である。また阻害の最適条件が整った場合には、多剤耐性がん細胞(KB/MDR1, KB/ABCC1, KB/ABCG2)に対する抗がん剤のin vitro殺細胞効果へのDextranの増強作用を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
各種輸送体高発現ベシクル、抗がん薬複数種の購入を計画している。また、各輸送体高発現がん細胞(KB/MDR1, KB/ABCC1, KB/ABCG2)を用いて、各種特異的基質の取り込み阻害実験、生存曲線への影響を検討する予定である。
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