研究課題/領域番号 |
18K06795
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
松元 一明 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (60733160)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ESBL産生菌 / フロモキセフ / ラタモキセフ / セフメタゾール |
研究実績の概要 |
基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌の発現率は、世界中で増加傾向にあり、この耐性菌に対する新たな治療薬の開発は喫緊の課題となっている。本研究ではESBL産生大腸菌を用いて、マウス大腿部または肺部感染モデルを作製し、フロモキセフ、ラタモキセフ、セフメタゾールのPK/PD(pharmacokinetics/pharmacodynamics)解析を行うことを目的に、まず、マウスにおける各薬物のPK解析を実施した。 5週齢ddy系マウスにフロモキセフ、ラタモキセフ、セフメタゾールを30、60、120、240 mg/kgの用量で皮下注射し、経時的に採血を行い、血中濃度は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した。PKパラメータは、1-コンパートメントモデルを用いて、Phoenix WinNonlinにより算出した。各抗菌薬の蛋白結合率はマウス血漿を用いて、平衡透析法により求めた。 フロモキセフ、ラタモキセフ、セフメタゾールのPKパラメータは、それぞれ蛋白結合率は11.2、10.4、13.4%、吸収速度定数5.97±0.29、8.72±2.44、9.15±0.87 /hr、消失速度定数5.99±0.30、3.03±0.21、5.76±0.19 /hr、分布容積0.34±0.04、0.61±0.12、0.47±0.07 L/kg、クリアランス2.02±0.23、1.85±0.30、2.69±0.36 L/hr/kgであった。フロモキセフ、ラタモキセフ、セフメタゾールは60~180 mg/kgにおいて、投与量と最高血中濃度、血中濃度-時間曲線下面積は比例関係にあった。 今後、ESBL産生菌を用いてマウス大腿部または肺部感染モデルを作製し、今回のPK結果をもとに様々な投与量と投与間隔でマウスに投与し、PKとPDの関係を明らかにする。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
蛋白結合率の測定について、当初限外濾過法で実施する予定であった。しかし、膜への吸着などその影響を最小限にする努力をしたが、上手くいかず、最終的には平衡透析法に変更して算出することができた。本研究では蛋白非結合型薬物濃度が非常に重要な因子であるため慎重に実施した。 PD解析まで進める予定であったが、上記の検討に時間が大幅に取られ、予想より研究の進捗がやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
ESBL産生大腸菌に対する各抗菌薬のMIC(最小発育阻止濃度)を微量液体希釈法で算出する。5週齢ddy系マウスに抗菌薬を投与する4日前に、シクロホスファミドを腹腔内に150 mg/kg、1日前に100 mg/kg投与し、好中球減少マウスを作製する。好中球減少マウスに、抗菌薬投与2時間前に、ESBL産生菌(1000000 CFU/mL)を大腿部または経鼻摂取し、マウス大腿部または肺部感染モデルを作製する。PK解析から得られたPKパラメータに基づき、様々なCmax、血中濃度推移、AUCになるように投与法を決定する。例えば、1回15-240 mg/kgで、2、3、4、6、8、12、24時間毎に投与する。抗菌薬投与直前および投与開始24時間後に、大腿部または肺部組織を採取し、培養後、生菌数を数える。抗菌薬投与開始24時間後の生菌数から投与直前の生菌数を引いた値が、抗菌薬投与による抗菌効果(PDデータ)となる。 ESBL産生大腸菌のMICに基づき、様々な投与法毎のCmax/MIC、time above MIC、AUC/MICの値を算出する。得られた各PK/PDパラメータ値と、それに対応する大腿部組織または肺部組織の抗菌効果(PDデータ)をエクセル上でプロットし、Sigmoid Emaxモデルを用いて各薬物の抗菌効果とそれぞれのPK/PDパラメータの寄与率(r2)を非線形最小二乗法により算出する。さらに、最もr2が高かったPK/PDパラメータを用いて、殺菌効果が得られる目標PK/PDパラメータ値を決定する。
|