本研究は、IgAのオリゴマンノース型糖鎖修飾が補体レクチン経路の第一因子であるマンナン結合タンパク質(MBP)を介してIgA腎症の発症と進展に関与する可能 性を検証し、その機序に基づいて新しい腎炎治療薬を開発することを目的としている。2018年度はいくつかのNアセチルグルコサミン誘導体が阻害活性を有する ことを見い出し、これが、MBPが関与する炎症性疾患の阻害薬のリード化合物になることが示唆された。2019年度はIgA産生マウス骨髄腫由来MOPC315細胞を糖鎖 プロセシング阻害剤デオキシマンノジリマイシン(DMM)の存在下で培養し、このIgAを抗原特異的アフィニティークロマトグラフィー法を用いて単離精製して得ら れたオリゴマンノース型糖鎖を有するIgAを抗原であるDNPとともに静脈注射したところ、コントロールとして用いたDMM処理していない通常型糖鎖修飾IgAに比べ て顕著な血尿の亢進、すなわち、投与後の一過性の腎障害の亢進が認められた。2020年度はさらに詳細に腎障害の程度を検討した。すなわち、尿中微量ヘモグロビンおよび尿中微量アルブミンを測定したところ、DMM存在下で培養した細胞から単離した糖鎖異常型IgA投与時において、通常型IgA投与時に比べて、腎障害の増悪の傾向が認められた。これらのことから、IgAのオリゴマンノース型糖鎖修飾はIgA腎症の増悪に関与する可能性が示唆された。
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