雄性のDBA/1JマウスおよびDBA/1Jコラーゲン関節炎誘発モデルマウス(関節炎マウス)を使用した。乾燥皮膚の程度を評価するために経表皮水分喪失量(Transepidermal water loss: TEWL)を測定し、皮膚組織の染色を行い、皮膚バリア機能に関与するヒスタミンやコラーゲンの発現を測定した。その結果、関節炎マウスでは、TEWLが上昇し、乾燥皮膚が生じた。また、関節炎マウスにおける皮膚中のI型およびIV型コラーゲンは低値であった。さらに、関節炎マウスの皮膚におけるマスト細胞数および血漿中におけるヒスタミン量は増加していた。これらのことから、関節炎マウスにおける乾燥皮膚の発現には、マスト細胞が関与している可能性が考えられた。関節炎マウスにおいてマスト細胞の増殖がc-kit抗体により阻害され、乾燥皮膚への影響が確認できた。また、皮膚中のI型コラーゲンの減少、MMP-1およびマスト細胞数の増加が抑制された。さらにTSLPや好中球、活性酸素などの因子が乾燥皮膚発現に関わることが明らかとなった。次いで樹状細胞の刺激により分化するTh2細胞およびTh17細胞で検討した。Th2阻害薬およびTh17阻害薬投与後、乾燥皮膚が改善された。Th2阻害薬を投与した関節炎マウスでは、非投与関節炎マウスよりIL-6、TNF-αが低下し、Th17阻害薬投与では皮膚中マスト細胞数が減少した。Th2細胞およびTh17細胞では、異なる機構で乾燥皮膚発現が誘導されることが示唆された。 以上の結果より、関節炎マウスにおける乾燥皮膚の発現メカニズムは、活性酸素やストレスホルモンによって活性化されるTSLPを介したマスト細胞および樹状細胞の関連が考えられた。これらの因子を抑えることは、関節疾患患者における乾燥皮膚症状を緩和することに繋がる可能性が示唆された。
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