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2018 年度 実施状況報告書

アルツハイマー型認知症治療を目指したインスリン経鼻投与後の新規脳内送達法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 18K06803
研究機関京都薬科大学

研究代表者

山本 昌  京都薬科大学, 薬学部, 教授 (00166779)

研究分担者 勝見 英正  京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (30434666)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードインスリン / 経鼻投与 / 脳移行性 / 吸収促進剤 / 認知症治療
研究実績の概要

近年、インスリンは軽度のアルツハイマー型認知症の治療に有効であるとの報告が見られるが、インスリンは高分子で分解されやすいペプチド性医薬品であるため、その脳移行性は大きく制限される。一方、薬物の経鼻投与においては、鼻腔から脳脊髄液への薬物の直接移行経路が存在することが知られており、血液-脳関門を介さない薬物の新たな脳への移行経路として注目されている。
そこで本研究ではまずインスリンをマウスに経鼻投与し、経鼻投与後の脳への移行性について検討した。その結果、インスリン単独でも一部が脳に移行することが確認でき、特に嗅球においてインスリンの濃度が高いことが認められた。一方、前脳においてもインスリンは検出されたが、後脳にはほとんど移行しないことが認められた。
そこで、次にインスリンに吸収促進剤であるN-アシルタウリンを併用して、インスリンの経鼻投与後の脳移行性の改善を試みた。その結果、N-アシルタウリンである sodium methyl lauroyltaurate (LMT)及び sodium methyl cocoyltaurate (CMT) を併用してインスリンの脳移行性を検討したところ、これら吸収促進剤により血漿中インスリン濃度は顕著に上昇したが、インスリンの脳移行性は逆に低下することが認められた。このことから、これら吸収促進剤は、経鼻投与後のインスリンの血液中への移行性は増大させるものの、脳(嗅球、前脳、後脳)への移行性にはあまり効果が見られないことが認められた。これは、おそらくこれら吸収促進剤がインスリンの血中への移行性改善に優先的に作用した結果であると考えられる。したがって、今後はインスリン経鼻投与後、インスリンを選択的に血中に移行させず、脳への移行性を選択的に増大できるタイプの吸収促進剤の探索が必要であると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当大学において、従来から動物の麻酔にはペントバルビタールを使用していたが、ペントバルビタールは鎮痛作用が弱く、最近、当大学の動物実験員会において動物愛護の観点からペントバルビタールの単独での麻酔としての使用が禁止された。そのため、インスリンの経鼻投与実験において、ペントバルビタールに代わり三種混合麻酔やイソフルランの麻酔を使用したが、これら麻酔下では血糖値が顕著に上昇することが明らかとなり、インスリンの吸収性や脳移行性を正確に測定することが出来なかった。そのため、しばらくの間、インスリン経鼻投与後の吸収性や脳移行性を正確に評価できない時期があり、予定のスケジュールよりも遅れたが、現在は、ペントバルビタールにリドカインを併用した麻酔が当大学の動物実験委員会で承認され、この方法による麻酔下で実験を検討しており、徐々にデータが出つつある。したがって、麻酔の問題は解決したので、今後は実験の遅れを取り戻して検討を進める予定である。

今後の研究の推進方策

本研究では、N-アシルタウリンである sodium methyl lauroyltaurate (LMT)及び sodium methyl cocoyltaurate (CMT) を併用してインスリンの脳移行性を検討したところ、これら吸収促進剤により血漿中インスリン濃度は顕著に上昇したが、インスリンの脳移行性は逆に低下することが認められた。このことから、これら吸収促進剤は、経鼻投与後のインスリンの血液中への移行性は増大させるものの、脳(嗅球、前脳、後脳)への移行性にはあまり効果が見られないことが認められた。これは、おそらくこれら吸収促進剤がインスリンの血中への移行性改善に優先的に作用した結果であると考えられる。したがって、今後、これら促進剤の濃度や投与のタイミングなどを変更して、インスリンの脳内移行性を改善できる条件を検討していく予定である。さらに、これら促進剤で十分な効果が認められない場合には、インスリン経鼻投与後、インスリンを選択的に血中に移行させず、脳への移行性を選択的に増大できるタイプの新たな吸収促進剤を探索する予定である。

次年度使用額が生じた理由

当該年度では、すべての交付額を物品費で支出したが、一部の物品が予想よりも安価で購入できたため、わずかながら残高が生じた。その分は、次年度使用額として計上した。

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公開日: 2019-12-27  

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