研究課題/領域番号 |
18K06810
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
小田切 優樹 崇城大学, 薬学部, 特任教授 (80120145)
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研究分担者 |
森岡 弘志 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 教授 (20230097)
田口 和明 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 講師 (90621912)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 多機能性アルブミン / 低分子抗体 / 抗体医薬 / 担体 |
研究実績の概要 |
本研究では、独自に構築した異型アルブミンライブラリーとアルブミン融合技術を低分子抗体医薬の担体開発に活用し、「血中滞溜性や臓器標的化といった体内動態の制御」と「低コストかつ品質安定性の向上」を可能とする“機能性アルブミン-低分子抗体融合体”の創製を目的として企図された。すなわち、本研究では、費用対効果及び汎用性に優れた次世代型抗体の創製を最終目的として、異型アルブミンライブラリーより抽出した機能性HSAを担体とする低分子抗体デリバリーシステムの開発を試みる。令和元年度には、機能性HSA-低分子CEA抗体融合体の構造特性、抗原との結合性、殺細胞効果、体内動態特性の4項目について検討した。その結果、機能性HSA-低分子CEA抗体融合体は、HSAと類似した構造を有していたことから構造特性は保たれていることが示唆された。また、機能性HSA-低分子CEA抗体融合体のCEA抗原との結合性は低分子CEA抗体と比べ低下していた。しかしながら、依然として抗原結合性は保持されており、CEA陽性LS174T細胞に対して細胞死を誘導した。一方、CEA陰性HT1080細胞に対しては細胞死を誘導しなかったことから、機能性HSA-低分子CEA抗体融合体はCEA抗原を介して細胞死を誘導することが明らかとなった。さらに、正常マウスを用いて機能性HSA-低分子CEA抗体融合体の体内動態の検討を行った結果、HSAと類似した体内動態を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況本年度は、機能性HSA-低分子CEA抗体融合体の構造特性、抗原との結合性、殺細胞効果、体内動態特性の4項目について検討した。機能性HSA-低分子CEA抗体融合体の構造特性はHSAと類似していたことから、構造特性は保たれている可能性が示唆された。CEA抗原との結合性を低分子CEA抗体と比較したところ、HSAとの融合化によりCEA抗原に対する結合性は低下していたものの、依然として抗原結合性は保持されていることが判明した。機能性HSA-低分子CEA抗体融合体の殺細胞効果をCEA(+)のLS174T細胞及びCEA(-)のHT1080細胞を用いて検討したところ、CEA(+)細胞では細胞生存率の低下が観察されたが、CEA(-)細胞では生存率の低下は認められなかった。これらの結果から、機能性HSA-低分子CEA抗体融合体は低分子CEA抗体の生物活性を保持しており、CEA抗原を介して細胞死を誘導できることが明らかとなった。また、機能性HSA-低分子CEA抗体融合体の体内動態に関しては、正常マウスを用いた検討と担癌マウスを用いた予備的検討を行った。その結果、正常マウスに対しては、HSAと類似した体内動態を示した。また、CEA陽性大腸癌細胞を背部皮下に担癌したBALB/cヌードマウスを用いた検討では、HSAと同等の腫瘍移行性を有している可能性が示された。この点に関しては、最終年度で再度検討していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、前年度に検討を開始した機能性HSA-低分子CEA抗体融合体の体内動態について追加の検討を行う。具体的には、CEA陽性大腸癌細胞を背部皮下に担癌したBALB/cヌードマウスに対して125Iあるいは蛍光色素標識した機能性HSA-低分子抗体融合体を静脈内投与し、血中滞留性、腫瘍組織移行性、正常臓器分布を評価する。なお、血中濃度推移に関しては、抗CEA抗体及びHSA抗体を用いて同様な検討を行う。加えて、腫瘍組織内への融合体の浸透性を抗CEA抗体あるいは蛍光色素により解析する。次に、機能性HSA-低分子CEA抗体融合体の抗腫瘍効果をCEA陽性大腸癌細胞を背部皮下に担癌したBALB/cヌードマウスを用いて評価する。その際、腫瘍組織が100cm3に成長した段階から機能性HSA-低分子CEA抗体融合体を週1回の間隔で繰り返し投与し、腫瘍成長抑制効果を検証する。なお、上記の検討項目は、分担者と研究協力者が密に連携して効率良く実施することで達成できると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス蔓延の影響で、参加を予定していた日本薬学会が誌上開催となったため旅費を繰り越した。 最終年度の日本薬学会 (広島開催) の旅費として使用する。
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