研究課題/領域番号 |
18K06810
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
小田切 優樹 崇城大学, 薬学部, 特任教授 (80120145)
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研究分担者 |
森岡 弘志 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 教授 (20230097)
田口 和明 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 講師 (90621912)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アルブミン / 融合技術 / 低分子抗体融合体 / 担体 / 体内動態 / 低分子抗体医薬 |
研究実績の概要 |
本研究では、独自に構築した異型アルブミンライブラリーとアルブミン融合技術を低分子抗体医薬の担体開発に活用し、「血中滞溜性や臓器標的化といった体内動態の制御」と「低コストかつ品質安定性の向上」を可能とする“機能性アルブミン-低分子抗体融合体”の創製を目的として企図された。すなわち、本研究では、費用対効果及び汎用性に優れた次世代型抗体の創製を最終目的として、異型アルブミンライブラリーより抽出した機能性HSAを担体とする低分子抗体デリバリーシステムの開発を試みる。令和2年度は、主に「抗体に対する新たな担体候補としてのHSA誘導体の作製」を試みた。具体的には、さらなる血中滞留性の向上を企図したHSAダイマーの作製と腫瘍環境を標的としたマンノース修飾HSAの作製を行った。両誘導体ともにピキア酵母を宿主とした発現系を用いて組換え型タンパク質として作製した。HSAダイマー間はリンカー(GGGGS)2で接続した。また、マンノース修飾体は異型アルブミンライブラリーより抽出し、アミノ酸変異によるN結合型糖鎖付加を試みた。構造特性はスペクトル等により確認した。体内動態解析の結果、HSAダイマーは血中滞留性の延長に加え、EPR効果に基づく腫瘍組織滞留時間の延長が確認された。また、マンノース修飾体については、腫瘍細胞周囲に局在するマクロファージへの指向性を有することが明らかとなった。これら両担体は低分子抗体医薬の新たな担体として期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、独自に構築した異型アルブミンライブラリーとアルブミン融合技術を低分子抗体医薬の担体開発に活用し、①血中滞溜性や臓器標的化といった体内動態の制御、②低コストかつ品質安定性の向上、を可能とする“機能性アルブミン-低分子抗体融合体”の創製を目的として企図された。すなわち、本研究では、費用対効果及び汎用性に優れた次世代型抗体の創製を最終目的として、異型アルブミンライブラリーより抽出した機能性HSAを担体とする低分子抗体デリバリーシステムの開発を試みる。具体的には、平成30年度、令和1年度、令和2年度の3年間に①低分子抗体の担体候補としての機能性HSAのスクリーニング、②機能性HSA-低分子抗体融合体の設計と作製、③融合体の構造特性と変異原性の評価、④融合体とFcRnや抗原との相互作用解析(in vitro)、⑤融合体の殺細胞効果の評価(in vitro)、⑥融合体の体内動態の解析、⑦融合体の抗腫瘍効果の検証(in vivo)、の7項目を実施する。 本革新的な抗体医薬は、既存の抗体製剤よりも、治療効果の向上、投与量や投与回数の低減化を実現するうえ、他の低分子抗体にも容易に応用できることから、費用対効果及び汎用性に優れた新たな抗体療法の道を拓くことが大いに期待される。ところで、当然のことながら当初、上記の7項目の実施計画は十分に遂行可能と考えていたが、体調不良のため2カ月程度入院加療治療を余儀なくされたため計画通り進まず大幅に遅れ、結果的には⑤~⑦の項目については令和3年度にずれ込むことになった。このため、予算執行されなかった費用は次年度(令和3年度)への繰り越しとなった。
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今後の研究の推進方策 |
当然のことながら、実施計画3か年でやり残した 1)融合体の殺細胞効果の評価(in vitro)、2)融合体の体内動態の解析、3)融合体の抗腫瘍効果の検証(in vivo)、の項目を実施する。幸いにも体調もほぼ完全に回復していることより3項目についてはそれなりの成果が得られるものと期待している。このような事情から、令和3年度は本プロジェクトに集中するため、令和3年度の科研費申請を見送った。
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次年度使用額が生じた理由 |
残念ながら、体調不良のため2カ月程度入院加療治療を余儀なくされ計画通り進まず結果的にはいくつかの項目については令和3年度にずれ込むことになった。このため、予算執行されなかった費用は次年度(令和3年度)への繰り越しとなった。繰り越し残金では全ての項目の実施は不可能であるが、不足分は委任経理金等を充当して未実施の実験項目を実施する。
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