研究課題/領域番号 |
18K06816
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
松崎 利行 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30334113)
|
研究分担者 |
向後 寛 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (20282387)
向後 晶子 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (20340242)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | アクアポリン11 / 精子 / 精子特異的ノックアウト |
研究実績の概要 |
本研究ではアクアポリン11(AQP11)の機能を知るためにAQP11の腎臓を含め全身臓器での分布局在を知ることが必須である。これまで我々はウサギポリクローナル抗体を自作して解析に用いてきたが、とくに免疫電顕での検出力に難があるため、計画していたラットモノクローナル抗体の作製を重井医学研究所との共同研究で試みた。AQP11から6か所の抗原部位を選定して合成ペプチドを混合で免疫した。49クローンからさらにサブクローンをとりマウス腎臓で免疫染色をおこなったが良好な結果が得られず、モノクローナル抗体の作製は難しい状況である。 前年度作製した精子特異的AQP11ノックアウトマウスについてはさらに解析を進めることができた。AQP11が発現していると報告されている精子で特異的にノックアウトされるCre+;Aqp11flx/flxオスとコントロールとしてCre-;Aqp11flx/flxオスを用いて、野生型のメスとの交配を4か月以上繰り返し、産仔数について統計学的に解析をおこなった。Cre-;Aqp11flx/flxオス7匹のペアから31回の出産があり7.45仔/出産、Cre+;Aqp11flx/flxオス7匹のペアから35回の出産があり6.77仔/出産の結果であり、統計学的に有意差がないことが確認された。以上から精子のAQP11がノックアウトされても妊孕性には影響がないことが示された。また、左側精巣の重量(mg)/体重(g)を算出し、統計学的に解析したところ、Cre+;Aqp11flx/flxオスとCre-;Aqp11flx/flxオスで有意差はなかった。さらに精巣のHE染色、PAS染色で形態学的に解析をおこなったが、Cre+;Aqp11flx/flxオスで明らかな変化は認められなかった。ここまでの結果から、AQP11を精子で欠損させても機能的、形態学的には影響がないことが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モノクローナル抗体を得ることができなかった点で、計画していた免疫組織化学の解析が遅れてはいるが、やむを得ない。一方で、精子特異的なノックアウトマウスでの解析については、おおむね順調に進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
精巣でのAQP11のmRNA量は、ノックアウトで大きな影響が出る腎臓以上に多いことから、精巣でも重要な役割を果たすと考えられる。しかし、精子でAQP11をノックアウトしても妊孕性にも精巣の組織形態的にも影響がないことから、精巣についてさらに検討を進める。まず、そもそもAQP11が精原細胞から精子にかけて発現しているのかを再度確認する。手持ちのウサギ抗体では精巣の免疫組織化学では検出が困難であるが、喫緊の課題であり、組織の固定法や抗原賦活化法を改良することで免疫染色を試みる。またRNA scopeを用いたin situ hybridizationによって精巣でのmRNAの発現細胞を確認する。ノーザンブロットの結果では精巣のmRNAのサイズが腎臓や他の臓器に比べて大きいことが確認されており、タンパク質レベルでもサイズが異なるのかを検討する必要がある。手持ちの抗体でもウェスタンブロットは可能なため、コントロールマウスの精巣、精子特異的にノックアウトしたマウスの精巣でのウェスタンブロット解析でタンパク質レベルでの発現と分子量の大きさ等を解析する。 腎臓発生段階でのAQP11発現とノックアウトマウスでの表現型の解析についても、モノクローナル抗体を得られなかったことで進展しなかったが、精巣の解析同様にウサギ抗体で工夫をして進める。また、in situ hybridizationやウェスタンブロットを中心に解析することも考える。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通り執行したが、残額は次年度の試薬購入に充てる。
|