研究課題/領域番号 |
18K06821
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
武智 正樹 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (10455355)
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研究分担者 |
要 匡 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, ゲノム医療研究部, 部長 (40264288)
井関 祥子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (80251544)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Nager症候群 / Sf3b4 / 疾患モデルマウス |
研究実績の概要 |
スプライシング因子SF3B4は、四肢顔面骨形成不全症の一つであるNager症候群の主な原因遺伝子である。本研究では、マウスを用いてSf3b4の発現解析と機能解析を行った。既存データベースより、マウスを含む複数の哺乳類においてSf3b4の偽遺伝子様配列(Sf3b4_ps)の存在を見出した。野生型マウス胚においてSf3b4の発現は2細胞期以降にみられて全身に発現するが、特に頭蓋顔面骨形成部や脳に高発現していた。一方で、Sf3b4_psは受精後から胎齢10.5日まで発現を認めなかった。前年度までにクローニングフリーCRISPR-Cas9システムを用いて作出したSf3b4ノックアウトマウスの胚発生を詳細に解析した。IVF(体外受精法)によりSf3b4ホモ欠失マウス(Sf3b4-/-)は胎生致死であることを確認した。Sf3b4ヘテロ欠失マウス(Sf3b4+/-)マウス胚は頸椎や腰椎がより後方の形態に変化しており、骨軟骨染色法によりその出現頻度を解析した。また、Sf3b4+/-マウス新生仔の前脳は野生型マウスと比較して小さく、これが頭蓋冠が扁平である要因と考えられた。しかし、ランドマーク法と主成分分析を用いて脳の形態測定を行ったところ、脳形態そのものには大きな影響は無く、Sf3b4+/-マウスに行動異常がみられないことと整合的であった。胎齢13.5日において前脳脳室帯の細胞増殖の割合はSf3b4+/-マウスで有意に高かったが、細胞死の割合には有意差が無かった。Sf3b4は中軸骨格の前後方向の形態パターニングと前脳の形態形成に関与することが示唆され、これらの結果をまとめて学術論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スプライソソーム症の一つであるNager症候群の主な原因遺伝子であるSf3b4の分子機能について解析するため、CRISPR-Cas9システムを用いて短期間でSf3b4のノックアウトマウスを作出することができた。このヘテロ欠失個体の胎児について、頭部組織での遺伝子発現、細胞増殖能や細胞死等をin situ hybridization法、定量PCRによる分子マーカーの発現解析や免疫組織化学染色等により明らかにした。これらの結果を学術論文としてまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きNager症候群の疾患モデルマウスの解析を進めるとともに、Sf3b4の共役因子であるSf3b1の胎生期における分子機能についても解析を進める予定である。またNager症候群患者由来のiPS細胞の確立に向けた実験を継続して進めており、確立された細胞株を用いた解析を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の一部は翌年度に行うように計画を変更した。
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