羊膜類の体幹筋は脊髄神経の背枝によって支配される軸上筋(epaxial)と、腹枝によって支配される軸下筋(hypaxial)に分けられる。さらに中軸筋と四肢筋では発生機構が異なり、前者の発生には肢芽が不要であるが、後者の形成には肢芽が必須である。この筋の分類に一致して、軸上筋はMMC、軸下筋のうち中軸筋はHMC、四肢筋はLMCニューロンによって支配され、それぞれのニューロンは特異的な分子を発現する。 肩の筋は体幹と上肢の中間にあって、体幹筋なのか四肢筋なのかはっきりしない。そこでニワトリで肢芽への依存性を調べたところ、菱形筋、前鋸筋は中軸筋、それより遠位の烏口上筋、肩甲下筋、広背筋、胸筋は四肢筋であり、体幹、四肢の境界はこれらの間にあることが示唆された。 次に、肩の運動ニューロンでの分子発現を調べたところ、遠位の肩の筋を支配する運動ニューロンはLMC型であったが、菱形筋、前鋸筋の支配神経はLMC型ではなかった。この神経発生の結果は筋発生のものと一致しており、上記の筋分類が確かめられた。 更に、胸腹領域を加えて運動ニューロンの解析を行ったところ、MMC型(軸上)の分子発現を持ちながら腹枝(軸下)を通るニューロンが見つかった。すなわち、菱形筋、前鋸筋、肋骨挙筋、外肋間筋、外腹斜筋はMMC型(軸上)、HMC型(軸下)、両方の運動ニューロンによって支配されていたのである。よって、これらの筋群は軸上と軸下の中間領域を形成しており、これをmidaxial musclesと命名した。 これらの結果は肉眼レベルで成体を対象とした比較解剖学的所見とも一致しており、肉眼解剖学的成果を分子、発生から裏付け、古典的スキームに変更を加えるものとなった。
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