研究課題/領域番号 |
18K06826
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
本橋 力 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 講師 (40334932)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ダイレクトリプログラミング / 上皮-間葉系転換 / EMT / 間葉系細胞 / 角化細胞 / 色素細胞 / 神経堤細胞 |
研究実績の概要 |
令和1年度においては、以下の研究を行った。 研究1 EMT現象を用いた直接転換法の解析:我々はマスター遺伝子の強制発現による直接転換法を検討してきたが、EMTに関係する転写因子をマスター遺伝子と共発現すると直接転換できなかった細胞でも転換できたことから、EMTと直接転換の役割を解析している。これまで、マウス角化細胞の色素細胞への直接転換を試みたが、EMT関連転写因子の発現があっても色素細胞マスター転写因子m-Mitfだけでは転換しないことがわかった。本年度は、他の色素細胞マスター転写因子Mef2cとSox10をEMT関連転写因子と共発現させて色素細胞への直接転換を試みた。さらに、使用するレトロウィルスの感染法や細胞の培養条件の検討を行い、導入する転写因子の高発現をめざした。改良した方法で転換を試みたが、色素細胞に転換した兆候は示されなかった。一方、強いEMTが観察されるマウス乳腺上皮細胞を用いた直接転換も試みた。神経堤細胞マスター遺伝子Sox10とEMT関連転写因子を共発現させるとP75陽性細胞が発生することが観察され、神経堤細胞へ転換した可能性が示唆された。 研究2 EMT現象を促進する転写因子の新しい組み合わせの探索:効率的な直接転換をめざし、EMTを促進する新しい転写因子の探索や組み合わせの検討を昨年に引き続き行っている。既に明らかにしたEMT関連転写因子同士の組み合わせや新しく見出した転写因子を角化細胞や乳腺上皮細胞に過剰発現させ、EMT現象の発生の有無とその強弱を調べた。定量的PCRにより、E-CadherinとVimentinの発現の変動が著しく、EMTを起こす可能性のある転写因子を明らかにした。次年度ではこれらの転写因子とEMTの関連を詳細に調べ、直接転換へ応用する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
導入する転写因子の高効率の発現をめざしたレトロウィルス感染法や細胞培養法の改善、EMTを効率よく起こす細胞種の選定・採取に手間取った。それに伴い、EMTに関係する転写因子の探索にも予定以上の時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
マウス乳腺上皮細胞を用いた直接転換の試みで観察されたP75陽性細胞が神経堤細胞であることをin vitroとin vivoの解析を通して示す。これにより、EMTが直接転換を促進している根拠を示す。続いて、同細胞による色素細胞マスター遺伝子とEMT関連転写因子を用いた色素細胞への直接転換も試み、異なる細胞への転換でのEMTの効果を示す。前年度で明らかにしたEMTを起こす可能性のある転写因子に関してはEMTとの関連や強弱を詳細に調べる。その結果により、これら転写因子で起こしたEMTを介した直接転換法も試みる。引き続きEMT現象を促進させる転写因子の組み合わせの探索も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画どおりに研究が進まず、当初の経費を次年度に使用する必要が生じた。前年度の研究は本研究の根幹をなすものであり、次年度も引き続き行うため必要がある。経費は繰越分を合わせて前年度で計画した研究に沿って以下に示す項目に充てる。 フローサイトメーター解析のための各種蛍光抗体、定量的遺伝子発現解析試薬、遺伝子発現制御システム、遺伝子導入関連物品(遺伝子導入試薬、電気的遺伝子導入機器、レトロウィルス発現関連試薬)の購入。また、各種細胞培養のために必要な培養関連試薬、培地、実験用マウスなど動物飼育費用等も計上の予定。
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