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2018 年度 実施状況報告書

APC蛋白質の多角的解析-細胞内局在・上皮機能・神経機能から臓器発生まで-

研究課題

研究課題/領域番号 18K06827
研究機関岐阜大学

研究代表者

千田 隆夫  岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10187875)

研究分担者 山田 名美  岐阜大学, 大学院医学系研究科, 助教 (40727319)
松田 修二  岐阜大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (70296721)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードAPC / APC1638T / 海馬 / 腸上皮 / 歩行異常 / APC抗体
研究実績の概要

APCの生体機能を多角的に解析することを目的に、以下の検索を行った。1)マウス脳におけるAPCの発現をin situ hybridizationで検出した。野生型APCの発現は、大脳皮質、海馬、小脳皮質、嗅球で高かった。海馬のCA1~CA4の錐体細胞と歯状回・顆粒細胞のほぼすべての細胞で、APCの発現が認められた。APC1638マウスの脳におけるAPCmRNAの発現パターンは野生型とほぼ同様で、脳各部での発現量の差も見られなかった。2)APC分子中央のβカテニン結合部位が残存しているAPC1638マウスでは腫瘍は発生しない。しかし、脳や小腸をはじめ全身諸臓器で組織レベルでの分化増殖の異常はみられている。高脂肪食は膵臓や小腸にがんを誘発することが知られている。そこで、通常食では腫瘍ができないAPC1638マウスに高脂肪食を与え、膵臓・小腸の変化を調べた。高脂肪食を与えられたAPC1638Tマウスでは、不整形の膵島が散見された。膵島におけるB細胞(insulin陽性)数の比率は野生型、APC1638T共に60-75%で変わらなかったが、A細胞(glucagon陽性)数の比率は、野生型マウスでは減少したが、APC1638Tマウスでは増加した。高脂肪食を与えたAPC1638Tマウスでは、体重、内臓脂肪量、血清コレステロール値が低いことから、APC1638Tマウスでは脂肪の消化吸収効率が悪い可能性がある。3)APC1638Tマウスで見られる歩行異常(後肢の位相性の乱れ)の原因を探るために、腰部脊髄にKluver-Barrera染色を施して、顕微鏡観察した。腰部脊髄灰白質でのニューロンの分布密度は、野生型よりもAPC1638Tマウスの方が多かった。4)イムノブロッティング、免疫沈降、免疫組織のいずれにも使用できる特異性と汎用性の高い新規APC抗体を作製した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題の当初の計画では、APC1638Tマウスにおいて、1)腸絨毛の伸長のメカニズム、2)統合失調症様行動異常の分子基盤、3)歩行異常の分子基盤、4)APCの細胞内局在の制御機構、の4つの解析を目指すとした。平成30年度は、腸の解析も行なったが膵臓の検索が進み、興味深い結果を得ることができた。脳の解析ではin situ hybridizationで野生型とAPC1638Tの脳におけるAPCの発現に大差がないことが判明した。続いて新規作成したAPC抗体でタンパクレベルの発現解析が進捗した。歩行異常の原因究明は、腰髄におけるCPGの異常推測し、形態学的な検索を進めた。上記の複数の実験において、新規APC抗体を作製できたことが研究の進捗を加速させた。これまでの市販抗体では、イムノブロッティング、免疫沈降、免疫組織のいずれにも使用できるものはなかった。私たちが作成した抗体は、特異性と汎用性のいずれも高いことが示された。

今後の研究の推進方策

平成30年度の研究成果を踏まえて、令和元年度は以下のように研究を進めていきたい。1)高脂肪食投与による小腸と膵臓の変化を野生型とAPC1638Tで比較する研究をさらに進める。腸上皮の増殖、分化、移動、脱落のカイネティクスに乱れがないかどうか、に特に注目する。2)野生型とAPC1638Tの脳の解析では、海馬の形成異常の有無を組織構築(錐体細胞、インターニューロン、神経線維束、グリア細胞)からチェックし、APCの発現量をPCRとウェスタンブロッティングおよび形態学的方法(in situ hybridization、免疫組織化学)で比較する。シナプス機能の異常の有無をpreとpostの両面から迫る。pre側としては、シナプス小胞の数と分布を電顕観察で明らかにし、postにおけるAPCとPSD-95,NMDA受容体/AMPA受容体の結合・共存を、免疫沈降法と二重免疫染色で明らかにしたい。3)歩行異常の原因究明のために、腰髄における特定介在ニューロンのトポロジー解析(数と分布)を行う。VGLUTに対するin situ hybridizationによってグルタミン酸作動性ニューロンを検出し、GABA抗体による免疫組織化学によってGABAニューロンを特定する。4)APCの細胞内局在については、細胞のcontact inhibitionに伴うAPCの細胞内局在の変化とそれを制御するシグナル伝達系の関連を明らかにしたい。

次年度使用額が生じた理由

平成30年度に研究打合せのために2,3回、研究成果発表のために1,2回の国内出張を見積もっていたが、前者はメール等でのやりとりで済み、後者は他の研究費で支弁できた。さらに免疫組織化学法で使用する抗体の購入を次年度にまとめて購入することにしたため、消耗品費が予定より少なくて済んだ。そのために342,425円を令和元年度に繰り越した。令和元年度には研究打合せ、研究成果発表のための出張を数回見込んでいることと、10種類以上の抗体を購入して、免疫組織化学法による実験を集中的に推進する予定なので、繰り越した経費と翌年度分を合わせて使用する予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] BRI2 as an anti-Alzheimer gene2019

    • 著者名/発表者名
      Matsuda S, Senda T
    • 雑誌名

      Medical Molecular Morphology

      巻: 52 ページ: 1-7

    • DOI

      10.1007/s00795-018-0191-1

    • 査読あり
  • [雑誌論文] As easy as APC, amysterious protein.2019

    • 著者名/発表者名
      Senda T
    • 雑誌名

      www.impact.pub

      巻: March ページ: 58-60

  • [雑誌論文] Validation and application odf a novel APC antibody in western bloting, immunoprecipitation, and immunohistochemistry.2018

    • 著者名/発表者名
      Yamada N-O, Wenduerma, Matsuda S, Senda T
    • 雑誌名

      Medical Molecular Morphology

      巻: 51 ページ: 227-236

    • DOI

      10.1007/s00795-018-0196-9

    • 査読あり
  • [学会発表] APC1638Tマウスにおける腰部脊髄灰白質の形態学的異常2019

    • 著者名/発表者名
      石田裕保、李晨光、小川名美、松田修二、千田隆夫
    • 学会等名
      第124回日本解剖学会総会・全国学術集会
  • [学会発表] 細胞、組織、個体に及ぼすAPCの多彩な機能2018

    • 著者名/発表者名
      千田隆夫
    • 学会等名
      日本組織細胞学会第91回大会
    • 招待講演
  • [学会発表] APC1638Tマウスにおける歩行時の肢間協調運動の異常と今後の展望2018

    • 著者名/発表者名
      石田裕保、李晨光、松田修二、千田隆夫
    • 学会等名
      第123回日本解剖学会総会・全国学術集会
  • [学会発表] 特異性と汎用性の高い新規APC抗体の作製2018

    • 著者名/発表者名
      千田隆夫、オントルマ、松田修二、山田名美
    • 学会等名
      第50回日本臨床分子形態学会学術集会

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公開日: 2019-12-27  

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