研究課題/領域番号 |
18K06830
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
森 徹自 鳥取大学, 医学部, 教授 (30285043)
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研究分担者 |
岡田 誠剛 倉敷芸術科学大学, 生命科学部, 教授 (40334677)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 成体ニューロン新生 / 微小神経回路 / 脳室下帯 |
研究実績の概要 |
前年度は子宮内電気穿孔法を用いて、SVZ-Nに対してGFP発現プラスミドを導入し、その形態や投射先を検索することを試みた。しかし、SVZ-Nの産生ピークである胎生13日の前脳基底部にプラスミドを導入することは非常に効率が悪いことが判明した。そこで今年度は、SVZ-N産生の2番目のピークである生直後の新生仔マウスに対して、電気穿孔法でプラスミドを導入することを試みた。CAGプロモーターによってGFPを発現するプラスミドを、新生仔マウスに導入する予備実験を行ったところ、線条体に接するSVZに、非常に効率よく遺伝子導入することが可能であることが分かった。ニューロン特異的プロモーター(synapsin1)でGFPを発現するプラスミドを導入し、2-3日後に固定、解析すると、ごく少数の放射状グリアがGFP陽性となることが分かった。これらの細胞は、おそらくSVZ-Nに分化してゆく細胞であると考えられる。 前年度の結果から、SVZ-Nは成熟過程で細胞死によって脱落してゆく可能性が示唆された。死細胞を効率よく検出する組織学的方法としてFluoro-Jade C (FJC)染色が知られる。FJC染色と通常の蛍光免疫染色によって脱落SVZ-Nの解析を試みた。しかし、FJCの前処理によって、蛍光免疫染色のシグナルが大幅に減弱することは以前から知られている。実際にFJCと蛍光免疫染色の二重染色を行うと、神経幹細胞マーカーのシグナルが減弱し、鮮明な画像を撮影することが困難であった。そこで、FJCと蛍光免疫染色の二重染色プロトコールの改良を行い、鮮明な画像を得ることに成功した。本研究課題を推進するための成果であるだけでなく、死細胞を組織学的に検出する際に、非常に有用な手技であるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
胎生13日マウスを用いたSVZ-Nへの遺伝子導入を断念し、成体脳を用いた遺伝子導入に切り替えた。その際、市販器具ではなく、外国製の特注器具が必要であったが、新型コロナウイルスの流行により入手が大幅に遅れた。代替手段として、新生仔マウスを用いた方法に切り替え、条件設定を最初から行ったため、全体的に研究の進捗が遅れた。 また、新型コロナウイルス禍で学内業務が多忙になり、研究活動に割くことができる時間が大幅に減ったことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の実験から、新生仔マウスに対してsynapsin1プロモーターによってGFPを発現するプラスミドをSVZに導入することで、SVZ-NをGFP標識することが可能になることを示唆するデータを得ている。この方法で、プラスミド導入後に成体まで飼育することで、SVZ-Nの形態、投射先について詳細に解析する。また、入手が遅れていた、成体脳へ遺伝子導入するための特注器具については、ようやく入手することができたため、成体SVZ-Nへの遺伝子導入プロトコールを確立し、新生仔マウスにGFP発現プラスミドを導入した結果を補強するための実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス禍で、研究の進捗が大幅に遅れた。研究計画を1年延長し、引き続き研究を行う。
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