研究課題/領域番号 |
18K06831
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
荒木 伸一 香川大学, 医学部, 教授 (10202748)
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研究分担者 |
江上 洋平 香川大学, 医学部, 講師 (80432780)
川合 克久 香川大学, 医学部, 助教 (80534510)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エンドサイトーシス / 膜輸送 / Rabタンパク質 / PI3キナーゼ / マクロパイノサイトーシス / ライブセルイメージング |
研究実績の概要 |
本研究は、マクロパイノサイトーシスから派生する Rab10 陽性管状構造を Rac1 光制御で選択的に誘導し、その形態及び分子局在の特徴から新規エンドサイトーシス経路としての存在とその分子基盤を確立することを目的とする。2019年度の研究で、マウスマクロファージRAW264 細胞に、すべてのクラスのPI3キナーゼを阻害するwortmannin存在下でPMAを添加すると、典型的なマクロパイノゾーム形成は阻害されるが、Rab10陽性管状構造が多数形成されることが分かった。2020年度は、このRab10 陽性管状新規輸送経路におけるPIP3脂質代謝の役割ついて解析を行った。RAW264細胞にGFP-Rab10を発現させ、共焦点レーザー顕微鏡を用いPMA刺激によるRab10陽性管状エンドゾームの形成に対するwortmannin以外のPI3キナーゼ阻害剤の影響を定量的に評価した。その結果、LY294002,ZSTK474などのクラスI PI3Kを阻害する薬剤で、マクロパイゾームの形成が減少し、逆にRab10陽性管状エンドゾームの形成が有意に増加した。さらにクラスI PI3キナーゼの下流にあるAkt(protein kinase B)を、MK-2206やAKT inhibitor Xで阻害した場合は、マクロパイゾームの形成は抑制されないが、Rab10陽性管状エンドゾームはやはり増加した。これらの結果は、PI(3,4,5)P3が生成されないことでマクロパイノゾーム形成は抑制され、さらにAktが抑制されることでRab10陽性管状エンドゾーム形成が促進されるということを示しており、マクロパイノサイトーシスによる液相性の輸送からRab10陽性管状エンドゾームによる膜輸送への切り替えが、クラスI PI3キナーゼ-Akt経路シグナルによって制御しているということを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規エンドサイトーシス経路の制御因子として重要視していたクラスI PI3キナーゼの関与を明らかにした。また、その下流分子であるAktの抑制を介しRab10陽性管状構造が誘導されることを示唆する結果を得ることができた。これらの研究成果については、日本組織細胞化学学会、日本解剖学会の一般演題およびシンポジウムで報告している。Rab10陽性管状エンドゾームにより輸送される分子については、まだ探索中であり、同定には至っていないが、研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
Akt活性化が抑制されることで、どのようにRab10陽性管状エンドゾーム形成が促進されるのかそのメカニズムを解明するため、Rab10のGEF,GAPとAktの関連に着目し解析を進める。Rab10のGAPの1つとして知られるAS160は、Aktによるリン酸化で活性化されることが知られており、AS160活性化がマクロパイノゾーム形成、安定化に働き、不活化によりマクロパイノゾームからRab10陽性管状エンドゾーム形成へ移行するという仮説が成り立つ。このことを証明するために、AS160のGAP活性変異体発現によるマクロパイノゾーム形成、Rab10陽性管状エンドゾーム形成への影響を解析したい。また、これと並行して、Rab10陽性管状エンドゾームが輸送するもの、機能関連についても探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
過年度分の購入した消耗品のストックを消費し、新規の消耗品の購入を遅らせた。次年度にこれらの出費が必要となる。新型コロナ感染症拡大のため参加予定していた学会が誌上発表となり、旅費の必要がなくなった。
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