研究課題
我々の器官には、指の長さや骨盤、生殖器官など様々な形態の性差がある。近年、器官のみならず、病態発症にも性差があることがわかってきた。性差形成には男性ホルモンであるアンドロゲンが不可欠である。しかし、アンドロゲンがどのような分子を介して、どのような機序で性差を形成するのか?そのメカニズムはわかっていない。申請者は、顕著な性差を有するマウス外生殖器形成過程をモデルとして、オスの外生殖器原器に特異的に発現する発生制御因子Mafbを同定し、その下流因子として細胞外マトリックス (ECM)リモデリング因子が機能している可能性を見出した。本研究は、性差形成に関わるECMリモデリング因子とその基質を同定し、新たに樹立した外生殖器組織切片培養及び遺伝子改変マウス解析を駆使して、性差形成過程におけるECMリモデリングの意義を明らかにすることを目的としている。RNA-seqによる網羅的発現解析から、外生殖器性差形成過程において発現量が高いMmpは、3種類あることがわかった。組織in situハイブリダイゼーションおよび免疫染色により、これらのMmpsは、尿道の性差形成に不可欠な尿道両側間葉細胞に発現しており、そのうちの1つは、メスに比べてオスで優位に高発現していることをq-PCRにより確認した。さらに、アンドロゲンの特異的な受容体であるアンドロゲンレセプター(AR)のノックアウトマウスの解析から、このMmpの発現は、オスARノックアウトマウスにおいて低下しており、Mmpsが尿道の性差形成に関与している可能性を見出した。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り外生殖器性差形成過程において、発現するMmpsの詳細な発現様式を解析することができた。さらに、外生殖器性差形成過程において、オスで優位に高く発現するMmpを同定することができた。
外生殖器性差形成過程において発現するMmpを同定したことによって、性差形成に関与する細胞外 マトリックス(ECM)に推測が可能となった。性差形成に寄与するECMを同定するため、ラミニンやファイブロネクチン、コラーゲンなどの発現様式を免疫染色を中心に詳細に調べる。外生殖器原器による組織器官培養システムを用いて、Mmpの阻害剤を用いた阻害実験により外生殖器性差形成過程におけるMmpの意義について検証する。
次年度繰越金および翌年度助成金により、性差形成に関与するECMの同定および性差形成過程におけるMmpの意義について、組織切片培養系を用いて明らかにする。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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