研究実績の概要 |
<硬骨魚の鱗と感丘の再生過程における関係性の検討について> 1. ポリプテルス成魚の側線鱗と通常鱗の異所性交換移植のための準備を整えた。予備実験では、3ヶ月で生着すること、技術的に十分実施可能であることが分かった。ただし、鱗を覆う表皮(および感丘)を出来るだけ傷つけないように鱗同士の強固な結合を外せるかが課題となった。 2. インドネシア産シーラカンスの側線鱗の組織切片を作製し観察したところ、露出部のみにエナメル質および象牙質の硬組織と色素細胞が存在しており、そこを通るように側線管の孔が開くことが明らかとなった。また感丘に繋がると思われる神経束が観察されたことから、トンネル型側線感丘が存在することはほぼ間違いない。これは線画のみの報告に留まった Millot and Anthony (Anatomie de Latimeria chalumnae Tome II, 1965) による知見よりも実態の伴った結果といえる。 3. ポリプテルスの鱗には、エナメル質の下に象牙質も島状に存在することが、偏光フィルターを用いた微分干渉顕微鏡観察により明らかとなった。これは既報の白亜紀のガーObaichtys (Brito, et al., 2000) の鱗に酷似している。従ってポリプテルスの鱗は、白亜紀のガーや現存のシーラカンスと同様に、コズミン鱗を持つことが明らかとなり、従来の教科書に書かれているような鱗による形態的分類は修正が必要になった(2, 3項について日本分子生物学会2018にて発表)。つまり、ポリプテルスは我々が思うよりもシーラカンスに近いかも知れない。 4. ポリプテルス感丘細胞を標識する分子マーカーは限られているのだが、蛍光化学物質を用いて簡便に標識できることが分かった。これは今後の実験に大変意味のある事柄である。
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