研究課題/領域番号 |
18K06844
|
研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
重谷 安代 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (70431773)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ポリプテルス / 神経堤細胞 / 黒色素細胞 |
研究実績の概要 |
<ポリプテルスSox10欠損体の作製とエナメル含有鱗形成への神経堤細胞の関与の検討> 神経堤細胞の移動経路に関してゼブラフィッシュの羊膜類と異なる点は、色素細胞に分化する神経堤細胞は背側経路のみならず腹側経路を通ることである。しかしポリプテルスにおいては、羊膜類とゼブラフィッシュのどちらのタイプなのかは知られていないことから、これを確かめる必要が生じた。既報においては、Sox10は比較的後期に移動を開始する神経堤細胞群に発現し、黒色素細胞とグリア細胞の発生に関わることが知られている (Cf. Harris et al., Pigment Cell Melanoma Res. 2010)。 そこでポリプテルスにおけるPsSox10発現について調べてみたところ、受精後5.25日 (D5.25) 幼生において表皮下を移動する神経堤細胞と思しき弱い発現が見られ、続いてD6幼生では黒色素芽細胞の集まる4本の初期幼生ストライプ (Cf. Kelsh et al., Sem Cell & Dev Biol, 2009) が確認された。また頭部脳神経においてもPsSox10発現が確認された。従って、PsSox10は背側経路と腹側経路の両方を移動する黒色素細胞と、グリア細胞に発現すると考えられた。なお、4本の黒色素芽細胞の初期幼生ストライプのうち、外側面の外側ストライプは側線原基の位置と一致するために、今後作製する変異体ではこの経路を通る神経堤細胞を確認すれば良いことが明らかとなった。つまりポリプテルスのPsSox10は、ゼブラフィッシュのような背腹両経路を通る神経堤細胞に発現するのだが、羊膜類と同様に黒色素細胞やグリア細胞の発生に役割を果たすことが示唆された。背側路を通る黒色素細胞以外の色素細胞の可能性についても考慮した解析を続けたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
一年の中で一番の繁殖期に外出自粛宣言のために研究を停止せざるを得ない状況であった。そのため交配はできておらず、新たな胚の採取もできていないことから、胚を用いた実験は進んでいない。昨年度も施設の改築工事や寄生虫駆除のために胚の実験が進んでいないことから、最も核となる実験が進まないことは痛手である。
|
今後の研究の推進方策 |
胚の採取を1番のプライオリティと考え、従来よりも高頻度に交配を行う。そのためには外出自粛が解除され、毎日胚の世話ができる状況に早く体制を戻すことが重要であると考える。胚に注入するオリゴ等の用意や分子マーカーの入手は行っており、胚を用いた実験のための準備は確実に進んでいる。 Sox10欠損体を作製するにあたり、表皮下へ向かう神経堤細胞群の同定は出来たため(本報告)、直ちに欠損体作製に取り掛かる。もし生きた胚の入手が進まない場合に備えて、Sox10以外の候補遺伝子Sox9, mafBの発現解析を進める。またポリプテルスで黒色素細胞以外の色素細胞の関与の有無についても調べたい。 さらには硬骨魚の鱗と感丘の再生過程における関係性の検討について、ポリプテルス成魚の側線鱗と普通鱗のすげ替え実験で生着した個体が居るので(昨年度報告)、この解析を実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
胚を用いた実験が停止しているため、そこで使用すべき費用が手付かずである。状況が改善され次第、直ちに再開し使用する。
|