研究実績の概要 |
マウス活動量自動解析アルゴリズムの開発:ビデオカメラで記録したマウス飼育ケージ内の動画からマウスの活動量を自動的に解析するアルゴリズムを作成した。まず,ビデオ画像をモノクロ変換し,グレースケール値の閾値を設定して対象物と背景を区別した。前後の画像間でグレースケール値の差を求め,設定した閾値以上なら活動とみなす単純なアクティブ非アクティブ分離法(Active Inactive Separation)を開発した。この方法を用いて,全時間に対する「活動時間」の比率として活動率を求め,重力変化に対するマウス活動量の変化を調べた。 過重力・微小重力環境下での活動量変化:1 g環境下での明期の活動率は30~40%で,経過観察した30日間ほぼ変化しなかった。遠心飼育器を用いて,1.4 gに飼育環境を変化させると,活動率は1 gの半分程度に減少し,活動率が回復するのに1週間を要した。この結果は,3軸の直線加速度測定器を装着して測定した結果とほぼ同じであった。また,国際宇宙ステーションで用いられているマウス飼育ケージ(JAXA MHU, mouse habitat unit)に備え付けられているビデオカメラの映像を用いて,微小重力環境での活動量変化を調べた。国際宇宙ステーション内の微小重力環境に適応したマウスの活動率は,地上の1 g群とほぼ同程度であった。しかし,微小重力環境下で遠心飼育器を用いて1 g環境にして飼育すると,地上の過重力群と同様,活動量が低下し,その回復に1週間を要した。
これらの研究から,急激な重力変化に対して行動・活動は変化し,その適応には時間がかかることが分かった。また,本研究で開発した自動解析システムは,マウスの活動量解析に簡便かつ有用であることが分かった。
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