NRBP1内に二量体形成に関わるLisH配列と、ユビキチンリガーゼ(E3)の基質認識タンパクとCul2/Cul5間の結合のアダプター役をするElongin B/C(EloBC)の結合配列BC-boxにオーバーラップしてCul4A/Cul4Bとの結合の際のアダプター役DDB1の結合配列H-boxが存在することを見出した。さらに、TSC22DファミリーメンバーのTSC22D3とTSC22D4のシャペロン機能によりNRBP1の安定性と二量体化が促進され、片方のNRBP1にElo BCを介してCul2が、他方にはDDB1を介してCul4Aがそれぞれ結合して、Cul2/Cul4A-ヘテロ二量体構造のNRBP1-E3を形成することを明らかにした。次いで、同E3が抗アルツハイマー病因子であるアミロイド前駆体タンパク質(APP)結合タンパク質BRI2と相同因子BRI3を選択的にユビキチン化してプロテアソームによる分解へと導くことを見出した。また、NRBP1とBRI2/BRI3との相互作用には、NRBP1のアミノ酸配列 (328-355)の領域と、BRI2/BRI3の内腔側のC末ペプチドを除いた領域が重要であり、NRBP1の二量体化は不要であることが判明した。さらに、神経系細胞においてNRBP1の機能阻害が、内在性BRI2/BRI3タンパク質量の増加と共にアミロイドβ産生量の有意な減少を誘導することを明らかにした。 そして、NRBP1とBRI2/BRI3間の結合を阻害する化合物は、BRI2/BRI3を安定化して両因子の抗アルツハイマー病作用を増強することで、アルツハイマー病の治療薬になり得るのではと着想し、当該化合物をスクリーニングするためのアッセイ系の構築を行った。
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