研究課題/領域番号 |
18K06857
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
山下 勝幸 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 教授 (20183121)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 電気的軸索誘導 / galvanotropism / インテグリン / 鶏胚網膜 / 培養 / 網膜神経節細胞 / 細胞外マトリックス / カルシウム |
研究実績の概要 |
1) 超高倍率共焦点蛍光撮像システムの構築 細胞外マトリックスに含まれるラミニン・コラーゲンにインテグリンの頭部が結合する。その位置は細胞膜から約 30 nmの領域である。細胞外Ca2+はインテグリンとリガンドとの結合親和性を低下させる。この領域におけるCa2+分布・動態を可視化するために超高倍率共焦点蛍光撮像システムを構築した。光路に中間変倍レンズを3カ所で挿入し、一画素の受光領域が 3.6 nm x 3.6 nm の倍率を得た。また、連続撮影ソフトによりレーザー光源と通電装置の制御を可能とした。 2) 視神経形成におけるインテグリンと電場の役割の検証 網膜神経節細胞の軸索は網膜に内在する電場に誘導されて視神経乳頭へ集合する (Yamashita, 2013)。鶏胚網膜器官培養でこの過程を再現した。この電気的軸索誘導にインテグリンが関与するかを検証するために培養液にMn2+を添加した。Mn2+はインテグリンとリガンドとの結合を高親和性に固定する。Mn2+の添加により網膜神経節細胞の軸索はランダムな走行を示した。この結果から、視神経形成にはインテグリンを介した電気的軸索誘導が必須であることが明らかになった。また、培養網膜切片に電場をかけると網膜神経節細胞の軸索は陰極側へ向かう。そこで、網膜に内在する電場の収束様式を再現し、電場を陰極側へ向かって漏斗状に収束した。その結果、網膜神経節細胞の軸索は集合し神経束を形成した。 3) インテグリンの活性化と微小管形成に関与する細胞内シグナル伝達系の薬理学的解析 微小管結合タンパク (MAP1B) をリン酸化する酵素 (GSK3) の抑制剤 (LY2090314) と、インテグリンの活性化によりGSK3を抑制するリン酸化酵素 (Akt) の活性化剤 (SC79) の軸索伸長に対する効果を、網膜切片の定電場培養系において定量的に解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
定量的なデータの取得について目標を達成することができた。薬物の効果を検証するための定量的なデータの取得には、同じ条件での培養を繰り返す必要があり、再現性の高い実験が要求される。令和2年度は新型コロナの影響で出張が無く、多くの実験回数を重ねることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに構築した超高倍率共焦点蛍光撮像システムをさらに改良する。光路に中間変倍レンズを複数箇所で挿入すると励起光が減衰した。これを克服するために高出力レーザー光源を導入する予定である。また、Ca2+感受性蛍光プローブ (fluo-5N) を用いて軸索細胞膜近傍のCa2+分布に対する電場の効果について検討する。具体的には、単一軸索の陽極側と陰極側の表面におけるCa2+分布の増減を明らかにする。さらに、軸索内細胞骨格分子(微小管とアクチン線維)の構成について解析する。電場内でこれらの分子が再構成されるパターンを超高倍率共焦点蛍光撮像システムを用いて解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度では当初参加を予定していた国際学会が新型コロナの影響でWeb上での開催に変更され、旅費の支出が生じなかった。令和3年度使用額は、網膜の培養メディウム、及び、蛍光色素等の消耗品購入に充当する。
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