研究課題/領域番号 |
18K06859
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
赤羽 悟美 東邦大学, 医学部, 教授 (00184185)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | カルシウムチャネル / β細胞 / インスリン / 脂質 / カルシウムシグナル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「膵臓β細胞における電位依存性Ca2+チャネルを介したCa2+シグナル制御機構が、Stard10との相互作用を介して脂質代謝のセンシング・調節機構と連携している」という作業仮説を検証することにより、脂質異常を背景とした膵β細胞インスリン分泌機能不全の新たなメカニズムを明らかにすることである。研究代表者らは、これまでにリン脂質転移蛋白(Stard10)が電位依存性L型Ca2+チャネルαサブユニット(CaV1.2)と相互作用し、Stard10が膵臓や肝臓などの組織に特異的に発現し、脂質代謝ならびに脂肪滴サイズの制御に関わることを見出してきた。最近、2型糖尿病のリスク遺伝子の解析からStard10が膵臓β細胞におけるインスリン分泌と細胞内Ca2+シグナル制御に関わることが報告されたが、そのメカニズムは現在のところ不明である。そこで本研究において、膵臓β細胞におけるインスリン分泌―細胞内Ca2+シグナル―脂質代謝の連関機構を解析するべく、マウスβ細胞株(MIN6細胞)を用いて、インスリン分泌と細胞内局所のCa2+シグナルをリアルタイム・イメージングにより定量的に解析する実験系を構築した。現在、この実験系を用いて、電位依存性L型Ca2+チャネルを中心に細胞内Ca2+シグナル制御機構と脂質代謝機構の連関の定量的な解析とそれらに対する脂肪酸を中心とした脂質の影響について解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵臓β細胞におけるインスリン分泌―細胞内Ca2+シグナル―脂質代謝の連関機構を解析する目的で、初年度にマウスβ細胞株(MIN6細胞)を用いた実験系を構築した。MIN6細胞では、ヒトやマウスのβ細胞とは異なりStard10が欠損していることが判明したため、Stard10を安定発現するMIN6細胞株を作製した。さらにインスリンレポーターを構築し、インスリン分泌と細胞内局所のCa2+シグナルのリアルタイム・イメージングによる定量的解析実験系を構築した。2019年度は、それらの系を用いて細胞外のさまざまな栄養基質条件下において、電位依存性L型Ca2+チャネルをはじめとする細胞内Ca2+シグナル経路および細胞内局所のCa2+シグナル-インスリン分泌連関の定量的な解析を進め、Stard10との連関について検討を行った。細胞外の脂肪酸の影響について興味深い結果を得ており、現在、さらに詳細な検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度にMIN6細胞からのインスリン分泌と細胞内Ca2+シグナル制御に対する細胞外脂肪酸の影響について興味深い結果を得たことを踏まえて、MIN6細胞およびStard10安定発現MIN6細胞を用いて、電位依存性L型Ca2+チャネル-インスリン開口放出制御関連分子の細胞内局在の変化を詳細に解析するとともに、細胞内Ca2+シグナルとインスリン開口放出の定量的な解析を進め、細胞内経路を明らかにする。また、野生型マウスとStard10遺伝子欠損マウスから得た初代培養膵臓β細胞を用いて、上記の結果を検証する。以上の実験結果に基づき、膵臓β細胞の電気活動・電位依存性L型Ca2+チャネル活性・細胞内Ca2+シグナル・エネルギー代謝(脂肪酸β酸化を含む)・インスリン分泌を統合した数理モデルを構築し、シミュレーション予測を可能にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス(Covid-19)感染拡大を受けて学会が誌上開催になったため、学会出張旅費の支出が当初の予定額より少なかった。また、物品購入の際にキャンペーンを利用するなど経費節減に努めた。その結果、次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した助成金と合わせて、試薬・抗体・培地・細胞培養や生化学的実験に必要なプラスチック器具の費用、学会発表に伴う旅費・宿泊費、論文投稿に必要な費用として使用する計画である。
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