研究課題
我々のチームで新たに開発したkisspeptin抗体の実用化に成功し、ラット脳におけるkisspeptin神経細胞体の発現とその神経突起の投射範囲について、詳細に検討し、これまでに報告されている分布などと比較検討した。これまでに報告された前腹側室周囲核 anteroventral periventricular nucleus (AVPV)、弓状核 arcuate nucleus (Arc)に加えて、視床下部背側弓状核 dorsal arcuate nucleus 領域のドーパミンニューロンに多数のkisspeptin神経線維が投射していることが明らかとなり、kisspetpinのドーパミンニューロン介した下垂体前葉からのプロラクチン分泌制御への関与が強く示唆され、現在、この機能的解析を行っている。また、Kiss1 mRNAの発現についての生後発生変化を詳細に生検索し、性ホルモンが生直後から関わる可能性を見いだした。Kisspeptinニューロンの機能発現に摂食制御系が深く関わっている可能性は従来より多くの指摘があるが、詳細な検討は行われていない。そこで、短期間の絶食や低カロリーダイエット食によるカロリー制限を行うことにより生じるkisspeptinニューロンの免疫反応性やmRNAの発現変化を検索してきた。食事制限を加えることにより、思春期発動が抑制されることから、エネルギー制御系が性機能制御神経系に深く関わる可能性が想定され、具体的な神経ネットワークの解析を進めている。また、近年注目される胎生期における母体環境が、出生後の児の成長発達に及ぼす影響に関して、妊娠期に母体において様々なダイエット環境を作成し、その中で育った児のその後の生殖機能調整系に及ぼす影響を詳細に観察し、母体の低栄養状態が将来の児の生殖機能に影響を及ぼすことを見出した。
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