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2019 年度 実施状況報告書

歯周病による心疾患発症メカニズムとEpac1の治療標的としての可能性

研究課題

研究課題/領域番号 18K06862
研究機関鶴見大学

研究代表者

奥村 敏  鶴見大学, 歯学部, 教授 (60233475)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード歯周病 / リポポリサッカライド / 心不全 / アポトーシス / 線維化 / シグナル伝達 / ベータ遮断薬
研究実績の概要

[目的] 本研究では歯周病患者の血液中に通常検出されるレベルと同等の低用量Porphyromonas gingivalis 由来Lipopolysaccharide(PG-LPS)を投与した歯周病マウスモデルを作成し「歯周病の慢性的・持続的刺激が交感神経系の慢性刺激状態を引き起こし心筋リモデリングが誘発される」という仮説を立てその検証を行った。
[方法] マウス(C57BL/6/J オス12週令)を用いて、1) PBS投与群(Control群)、2) PG菌由来のリポポリサッカライド (LPS) 投与群 (LPS群)、3) ベータ遮断薬(プロプラノロール:PPL)投与群、4) LPSとPPLの併用投与群 (PPL+ LPS群) を作成した。心エコーを用いて心機能測定、心筋線維化領域、アポトーシス陽性細胞率、細胞内シグナル変化を調べた。
[結果] 1)Control群に比較してLPS投与群では心機能は有意に低値を示したが、PPLを併用した群では、心機能低下が有意に抑制された。2)Masson-trichrome染色による心筋線維化領域はLPS郡群では有意に増加したがPPL併用群では有意に抑制された。3)TUNEL染色よる心筋アポトーシス陽性細胞率はLPS郡群では有意に増加したがPPL併用群では有意に抑制された。4)心臓リモデリング発症における重要性が指摘されている筋小胞体の Ca2+の取込みに重要なホスホランバン(PLN: Thr-17、Ser-16)のリン酸化はLPS投与群で有意に増加させたが、その増加はPPL併用群で抑制された.
[結論] PG菌由来のLPSによる心機能障害にベータ遮断薬(プロプラノロール)は保護的に作用した。以上の結果は歯周病による心機能障害にベータアドレナリン受容体シグナルの重要性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度の研究成果より、歯周病に起因する心不全発症にベータアドレナリン受容体シグナルの重要性が示唆された。研究代表者は同シグナルの活性化にサイクリックAMP(cAMP)/Epac(exchange protein directly activated by cAMP)シグナルの活性化の重要性を先行研究で明らかにしている(Okumura et al. J Clin Invest 2014)。今年度の研究成果と研究代表者のこれまでの研究成果より歯周病による心疾患発症にEpac1が重要な役割を果たしていることが示唆された。

今後の研究の推進方策

PG-LPSの慢性投与による心機能低下にベータアドレナリン受容体シグナルの活性化が重要な役割を果たしていることが示唆された。PG-LPSの細胞膜受容体はToll-like receptor-4(TLR-4)であることから、TLR-4の下流とベータアドレナリン受容体ないしはEpac1がクロストークをしていることが示唆される。2020年度はTLR-4の阻害剤(TAK-242)投与を行ったマウスを用いてTLR-4シグナルとベータアドレナリン受容体シグナルのクロストークのメカニズムを解明する。

次年度使用額が生じた理由

2019年度に行う実験がマウスの準備状況で2020年度に行うことになったため。新型コロナウイルス感染拡大により第97回日本生理学会が誌上開催になったため。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 実験的咬合異常がマウスの心機能に及ぼす影響について2020

    • 著者名/発表者名
      八木澤由佳、吹田憲治、大貫芳樹、伊藤愛子、梅木大輔、友成博、奥村敏
    • 雑誌名

      循環制御

      巻: 41 ページ: in press

    • 査読あり
  • [学会発表] 咬合不調和はマウスにおいて交感神経の活性化を介して心房細動の脆弱性を高める2020

    • 著者名/発表者名
      吹田憲治、大貫芳樹、奥村敏
    • 学会等名
      第97回日本生理学会大会
  • [学会発表] P. gingivalis由来内毒素による心筋リモデリングに対するToll様受容体4阻害薬の抑制効果2020

    • 著者名/発表者名
      大貫芳樹、吹田憲治、奥村敏
    • 学会等名
      第97回日本生理学会大会
    • 招待講演
  • [学会発表] Porphylomonas gingivalis 由来LPSによる心疾患発症における心筋ßアドレナリン受容体シグナルの重要性2019

    • 著者名/発表者名
      松尾一朗、川村直矢、長野孝俊、奥村敏、五味一博
    • 学会等名
      第62回春季日本歯周病学会学術大会
  • [学会発表] 咬筋における小眼球症関連転写調節因子(MITF)の生理的役割2019

    • 著者名/発表者名
      成山明具美、奥村敏、朝田芳信
    • 学会等名
      第57回日本小児歯科学会大会
  • [学会発表] β1アドレナリン受容体の咬筋での役割2019

    • 著者名/発表者名
      伊藤愛子、大貫芳樹、梅木大輔、八木澤由佳、石川美佐緒、中村芳樹、奥村敏、友成博
    • 学会等名
      第78回東京矯正歯科学会大会
  • [学会発表] 口腔のストレスに起因する心疾患に対する抗ヘルペス薬(ビダラビン)の予防効果2019

    • 著者名/発表者名
      早川佳男、大貫芳樹、吹田憲治、石川美佐緒、伊藤愛子、川村直矢、八木澤由佳、松尾一朗、河原博、奥村敏
    • 学会等名
      第61回歯科基礎医学会学術大会
  • [学会発表] 骨格筋細胞の分化がβアドレナリン受容体の発現量に及ぼす影響とその生理学的役割2019

    • 著者名/発表者名
      伊藤愛子、大貫芳樹、梅木大輔、吹田憲治、石川美佐緒、八木澤由佳、中村芳樹、友成博、奥村敏
    • 学会等名
      第61回歯科基礎医学会学術大会
  • [学会発表] 咬合異常モデルにおける心臓リモデリングとβアドレナリン受容体遮断薬による抑制効果2019

    • 著者名/発表者名
      八木澤由佳、大貫芳樹、梅木大輔、吹田憲治、伊藤愛子、早川佳男、松尾一朗、中村芳樹、友成博、奥村敏
    • 学会等名
      第61回歯科基礎医学会学術大会
  • [学会発表] 咬合異常マウスの咬筋肥大効果におけるmiRNAの役割2019

    • 著者名/発表者名
      梅木大輔、大貫芳樹、伊藤愛子、八木澤由佳、吹田憲治、石川美佐緒、友成博、奥村敏
    • 学会等名
      第61回歯科基礎医学会学術大会
  • [学会発表] Mitf遺伝子変異による咬筋の線維化とアポトーシスの誘導2019

    • 著者名/発表者名
      成山明具美、大貫芳樹、吹田憲治、梅木大輔、伊藤愛子、八木澤由佳、石川美佐緒、朝田芳信、奥村敏
    • 学会等名
      第61回歯科基礎医学会学術大会
  • [学会発表] Porphylomonas gingivalis 由来のLPSによる心疾患発症メカニズムの解明2019

    • 著者名/発表者名
      松尾一朗、長野孝俊、奥村敏、五味一博
    • 学会等名
      第62回秋季日本歯周病学会学術大会
  • [学会発表] 咬合異常モデルにおける心臓リモデリングとβアドレナリン受容体遮断薬による抑制効果2019

    • 著者名/発表者名
      八木澤由佳、大貫芳樹、梅木大輔、伊藤愛子、奥村敏、友成博
    • 学会等名
      第78回日本矯正歯科学会学術大会

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公開日: 2021-01-27  

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