研究課題
[背景] Porphylomonas gingivalis 由来のリポポリサッカライド(PG-LPS)は当初 Toll-like receptor 2(TLR2)の選択的なアゴニストと考えられていたが、最近の研究からTLR2ではなく、TLR4の選択的なアゴニストとして作用し、サイトカインシグナルを活性化することが明らかにされた。歯周病患者ではPG-LPSが高値であること、心筋細胞の膜表面にはTLR4が発現しているという事実より、歯周病に起因する心疾患の発症のメカニズムとしてPG-LPSによるTLR4 への慢性持続的な刺激が重要な役割をはたしていると考えた。[目的] 本研究の目的は「PG-LPSによる心筋細胞に発現するTLR4 の慢性刺激が心疾患発症を促進する」という仮説を検証することである。[結果] 心エコーによる左室収縮能(LVEF:左室駆出率・FS:左室内径短縮率)は、Control群に比較してLPS投与群では有意に低下したが、TAK242併用群では、その低下が有意に抑制されていた。Bio-Plexアッセイ法を用いた血清サイトカインレベルの評価は4群間に有意差は無かった。マッソントリクローム染色による線維化領域の割合と線維化の指標であるα-SMAの発現量はControl群に比較してLPS投与群で有意に高値を示したがTAK242併用群では、その上昇が有意に抑制されていた。タネル染色によるアポトーシス陽性心筋細胞数はControl群に比較してLPS群では有意に高値、アポトーシス抑制タンパクBCL-2の発現量は有意に低値を示したがTAK併用群では、これらの変化が有意に抑制されていた。[考察] PG-LPSによる心筋リモデリングは、LPS投与に伴う単純な炎症性変化ではなく、PG-LPSによるTLR4への特異的刺激で誘導される心筋細胞死と置換性線維化に起因することが示唆された。
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10.1186/s12576-022-00826-4
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