研究実績の概要 |
(A) 2019年度に、C末端欠損型エストロゲン受容体α(estrogen receptor α, ERα; ESR1)アイソフォームがエストロゲン応答配列(ERE)を持つプロモーターを恒常的に活性化させるだけでなく、AP-1やSp-1などのnon-EREプロモーターを恒常的に活性化させること、さらに、その恒常的活性化がERアンタゴニスト耐性を示すことを発見した。さらに、2020年度は、その恒常的転写活性化および化学療法耐性に関与するERアンタゴニスト耐性獲得の構造-転写活性化連関の解析を推進した。また、エストロゲン受容体β(estrogen receptor β, ERβ; ESR2)研究は、これまで適切な抗体が存在しなかったことで迷走していたが、(B) 2019年度に、抗ヒトESR2モノクローナル抗体であるPPZ0506が齧歯類ESR2に対して特異的に反応することを発見し、齧歯類ESR2タンパク質の発現局在の同定に道筋をつけた。さらに、2020年度は、免疫組織化学染色法を用いたラットESR2タンパク質の局在解析を最適化し、真のラットESR2タンパク質発現局在を同定した。 2021年度は、(A)、(B)の知見をさらに進展させるため、研究を遂行した。(A)では、ERE、non-EREを介した構造-転写活性化連関双方を明確化し、ESR1のリガンド結合領域内のヘリックス構造の欠損が恒常的転写活性化能の獲得・増強に関与することを同定した。また、(B)の知見をもとに(2)ラットだけでなくマウスESR2タンパク質に対しても免疫組織化学染色法を最適化し、マウスESR2タンパク質発現局在を同定した。この一連の解析により、ヒト、マウス、ラットESR2の種特異的発現パターンが同定され、これまでのESR2研究で顧みられることがなかったESR2発現の種差が明確化された。
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