ヒスタミンは花粉症や胃酸分泌に関わる生理活性物質です。ヒスタミンは脳内にも存在しており、神経伝達物質として機能しています。我々は脳内でヒスタミン分解に関わるhistamine N-methyltransferaseという酵素を欠損させたマウスを作製し解析したところ、脳内ヒスタミン濃度が大きく増加し、更には攻撃性が増すことがわかりました。これらの結果から、慢性的にヒスタミンが増加すると攻撃性が増加する可能性が考えられます。そこで本研究では、まずマウスのヒスタミンを慢性的に減少したマウスを作製し、攻撃性を検討してみたところ、慢性的なヒスタミン減少はマウスの攻撃性には影響を与えないことが示され、この成果を国際誌に発表したしました(2020年度)。また慢性的な変化だけではなく、急性的なヒスタミン量の変化が攻撃性に与える影響についても検討を加えました。DREADDs(designer receptor exclusively activatedy by designer drugs)という手法を用いて、ヒスタミン量を短時間で増加あるいは減少させてみたところ、短時間にヒスタミン濃度が増えた場合には,攻撃性が増すことが明らかとなりました。一方で、短時間にヒスタミン濃度を減少させても攻撃性には影響を与えないことが示されました。またヒスタミンによる攻撃性を制御する部位として中脳水道周辺灰白質が考えられました。一方で、分界条床核に投射するヒスタミン神経だけを活性化させても攻撃性饒辺かは認められませんでした。これらの成果については2021年度に国際誌に発表を致しました。
|