研究課題
本研究では、KATPチャネル欠損マウスの表現型(Kir6.2チャネル欠損マウス:認知機能障害ならびに攻撃性症状、Kir6.1チャネル欠損マウス:うつ・不安症状ならびに攻撃性症状)に関する脳部位の同定、ならびに細胞内機序について明らかにし、ADの中核・周辺症状におけるKATPチャネルの病態生理学的役割について検討した。「研究課題1」: Kir6.2欠損マウスにおける認知機能障害の細胞内機序の解析、申請者は、記憶学習関連の行動解析によりKir6.2欠損マウスにおいて認知機能障害を見出しており、本研究では認知機能障害の標的部位である海馬における細胞内機序について明らかにした。特に、細胞内カルシウムシグナルに注目し、 Kir6.2欠損マウスにおける細胞内カルシウムシグナル異常について同定した。「研究課題2」:Kir6.1欠損マウスにおけるうつ・不安症状の細胞内機序の解析、申請者は、うつ・不安症状関連の行動解析によりKir6.1欠損マウスにおいてうつ・不安症状を見出しており、本研究では海馬歯状回(うつ症状の標的部位)ならびに海馬および外側扁桃体(不安症状の標的部位)における細胞内機序について明らかにした。特に、Kir6.1欠損マウスにおける不安症状の細胞内機序を同定し、現在、論文投稿中である。「研究課題3」: Kir6.1/Kir6.2欠損マウスにおける攻撃性症状の細胞内機序の解析、申請者は、攻撃性行動関連の行動解析によりKir6.1/Kir6.2欠損マウスにおいて攻撃性行動異常を見出しており、本研究では大脳皮質(内側前頭前皮質)における細胞内機序について明らかにした。その結果、大脳皮質におけるセロトニン神経系に関与を示唆しており、今後、論文として報告する予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究により、Kir6.1/Kir6.2欠損マウスにおける不安症状に関しては、既にデータがまとまり、論文投稿中である。また、Kir6.1/Kir6.2欠損マウスにおける攻撃性症状についても、論文投稿に必要なデータの最終段階まで来ていることから、当初計画以上に進展していると考える。
Kir6.1/Kir6.2欠損マウスにおける表現型解析は、引き続き、認知・精神機能に注目して取り組む予定でおり、Kir6.1/Kir6.2チャネルが中枢機能において必須の分子であることを同定し、中枢疾患治療への応用を目指したいと考える。今後の計画として、攻撃性行動関連の行動解析によりKir6.1/Kir6.2欠損マウスにおいて攻撃性行動異常を見出しており、本研究では大脳皮質(内側前頭前皮質)における細胞内機序について明らかにする。1. マイクロダイアリシス法を用いて、Kir6.1/Kir6.2欠損マウスの攻撃性行動誘発時における大脳皮質におけるカテコルアミン量について測定する。2. カテコルアミントランスポーター阻害薬の適応によりKir6.1/Kir6.2欠損マウスの攻撃性行動と大脳皮質におけるカテコルアミントランスポーターとの関連性について免疫ブロット法ならびに免疫組織化学的手法により検討する。3. 電気生理学的手法により、大脳皮質スライス切片を用いてKir6.1/Kir6.2欠損マウスにおけるシナプス伝達効率ならびにシナプスの可塑的変化について検討する。さらに、海馬歯状回(うつ症状の標的部位)における細胞内機序について明らかにする。1. 海馬歯状回におけるBrud/NeuN陽性細胞数について検討し、うつ症状と神経新生の関連性について検討する。2. 神経新生と関連する分子であるAkt、ERK、CREB等のリン酸化レベルならびにBDNFの発現量について免疫ブロット法により検討する。また、BDNFのmRNA量についてもReal-time PCR法により検討する。3. 電気生理学的手法により、海馬歯状回スライス切片を用いてKir6.1欠損マウスにおけるシナプス伝達効率ならびにシナプスの可塑的変化について検討する。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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