研究課題/領域番号 |
18K06888
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
森 寿 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (00239617)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | セリンラセマーゼ / D-セリン / NMDA受容体 / セリンシャトル仮説 / 遺伝子発現制御 / トランスジェニックマウス |
研究実績の概要 |
1)セリンラセマーゼ (SRR) 遺伝子のマウス個体での発現を計測するために、SRRゲノム遺伝子を含むバクテリア人工染色体(BAC)を用い、大腸菌内相同遺伝子組換えにより、SRR遺伝子の翻訳開始部位に、レポーターとして高感度で定量性が高いホタルルシフェラーゼ (Luc)遺伝子を挿入したトランスジーン BAC-Tg-SRR-Lucを構築し、全身からの発光計測が容易なヘアレスマウス系統の受精卵にマイクロインジェクションし、ファウンダーマウス系統を樹立した。このマウスを用いた発光計測の結果、脳のみならず内臓、胸腺、顎下腺でも発光を検出した。さらに今後の行動解析等に使用するためC57BL/6系統マウスでもトランスジェニックマウスのファウンダーを樹立し、脳での定量的発光計測が可能となった。 2)セリンシャトル仮説を検証するために、アストロサイト特異的にD-セリン分解を行うマウス系統の作製を進めた。アストロサイト特異的 3-phosphoglycerate dehydrogenase (3PGDH) 遺伝子を用いD-セリン分解酵素 (Dsd-1)を発現させるBAC-Tg-3PGDH-Dsd-1トランスジェニックマウス系統を確立した。Dsd-1に対する特異抗体を作製しウェスタンブロット法で、このマウス系統でのDsd-1の発現を確認した。 3)新たに神経細胞特異的Dsd-1発現トランスジェニックマウス系統を作製するために、神経細胞に広く発現するNeuN/FOX3遺伝子を当初用いる予定であったが、5’非翻訳エクソンが400 Kb以上の範囲に多数あり、遺伝子プロモーター領域の推定が困難と考えられた。そこで、大脳の興奮性神経細胞で広く発現するCaMKIIa遺伝子を用いることとし、トランスジーン BAC-Tg-CaMKIIa-Dsd-1を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画したBAC-Tg-SRR-Lucトランスジェニックマウスを、ヘアレス系統およびC57BL/6系統で確立し、発光計測も可能であることが明らかとなった。また、アストロサイト特異的にD-セリンを分解するBAC-Tg-3PGDH-Dsd-1トランスジェニックマウス系統で、作製した抗体によりDsd-1の発現を確認し、また脳内D-セリンが減少していることを明らかにした。さらに、神経細胞でD-セリンを分解するために、BAC-Tg-CaMKIIa-Dsd-1のトランスジーンを構築した。これらの研究実績から、1年目の研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1)BAC-Tg-SRR-Lucトランスジェニックマウスを用いて、発光量と内在性のSRRの遺伝子発現量の比較検討を行う。また、生後発達に伴うSRR発現変化を発光計測により検討し、SRR遺伝子発現モニターマウスとしての評価を行う。さらに、脳内へのNMDAの注入による神経変性疾患モデルやNMDARブロッカー(MK-801) の投与により誘導した統合失調症様精神疾患モデルなどで継時的な発光計測を行い、SRRの発現変化を評価する。 2)Dsd-1に対する特異抗体を用いて、Dsd-1がアストロサイトに特異的に発現することを確認する。さらに生後発達に伴うDsd-1の発現量変化の解析と脳内セリン濃度の測定を行い、アストロサイト由来D-セリンの生後発達変化を明らかにする。次いで、アストロサイト由来D-セリンの脳機能を明らかにするために、このマウス系統で文脈恐怖条件付けを用いた記憶・学習の解析を行う。 3)神経細胞特異的Dsd-1発現トランスジェニックマウス(BAC-Tg-CaMKIIa-Dsd-1)系統を確立し、Dsd-1の発現解析と脳内D-セリン濃度の計測を行う。 4)セリンシャトル仮説の検証により、D-セリン動態制御における神経細胞とアストロサイトの貢献度を明らかにしたのち、より重要な貢献をしている細胞種でD-セリン輸送に関わる中性アミノ酸トランスポーターの発現を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、遺伝子操作マウスの作製と維持繁殖を動物実験施設で実施した。本学では、2018年12月から2019年3月までの2018年度に使用した4ヶ月分の動物実験施設使用料金が、2019年4月に請求されるため、次年度使用とした。
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