研究課題/領域番号 |
18K06893
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
中野 大介 香川大学, 医学部, 准教授 (30524178)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | SGLT2 / 腎臓 / リプログラミング |
研究実績の概要 |
腎尿細管における糖取り込み調節が心腎血管障害へおよぼす影響を検討する。特に、SGLT2阻害薬による尿細管糖取り込みの神髄とそれによる細胞リプログラミングを検証し、心血管系への遠隔保護作用も解き明かすことを目的とする。予備実験として行っていた論文は2018年にKidney International誌に受理された。その発展形として、1)この現象の詳細な機序の検討、2)腎臓から他臓器への連関を介した心血管保護効果を示すかの検討を2018年度に行った。1)の機序検討のために複数の培養細胞(mProx24およびprimary culture)を用いて、in vivoの現象を再現できる培養近位尿細管細胞の樹立を試みている。その結果、単層培養近位尿細管細胞では、SGLT2とGLUT2の同時阻害あるいは培養上清中糖の除去によりVEGFAの発現が10倍以上に上がること、いずれかの阻害薬単体ではほとんど効果を示さないことがわかった。しかしながら、単層培養系では、SGLT2とGLUT2の極性に不安が残るため、トランスウェルでのprimary cultureに挑戦しているところである。In vivoにおいては、血糖値の高低により近位尿細管細胞における糖取り込み動態、尿への糖排泄に大きな差が生じることを見出した。次に2の検討として、の遠隔臓器への効果を観るため、水溶性因子の関与を検討している。SGLT2阻害薬は腎臓においてVEGFAの発現亢進を促し、VEGF受容体の阻害によりSGLT2阻害薬の腎保護効果は消失することから、SGLT2阻害薬による血管系保護効果には、障害により脱落した毛細血管網に対するVEGFAによる血管新生作用が効果を発揮していると考えられた。しかし、この条件下では大静脈から採取した静脈血中のVEGFA上昇が確認できず、他の因子も含めて、責任因子を検索中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度上半期中には培養系を確立し、機序検討に乗り出す予定であったが、本研究には生体の状態を再現する培養系の確率が不可欠であり、2018年度中に確立に至ることは出来なかった。また、in vivo実験においては、遠隔臓器への作用として当初予定していたVEGFA(腎臓における責任因子)の腎静脈・大静脈中の濃度上昇が確認できず、他の因子へシフトする必要が生じ、現在は因子探索を急いでいる。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り、確証は掴めていないが候補因子の筆頭はVEGFAである。心不全においてはVEGFによる浮腫増強の可能性が懸念される。一方で、SGLT2阻害薬には利尿効果があるため、浮腫が真に憂慮すべき点であるかを判断する必要がある。体液貯留、血管透過性の亢進が起きているかをMiles assay等の確立された方法により検討する。また、SGLT2阻害薬によりケトン体産生の亢進も報告されている。このケトン体がアシドーシスによる負の作用を示すか、あるいはエネルギー源として働くかを計画2のモデルにより検討する。 また、腎を起因とする心腎連関と、それに対するSGLT2阻害薬の抑制効果を示唆する。そこで本研究計画では、予め非致死レベルの心筋梗塞を誘導したマウスに対して、尿細管糖取り込み不全を誘導し、血管網再構築、梗塞領域の拡大、心筋菲薄化に対する効果を検証する。また、末梢血管への影響を確認する目的で、下肢虚血モデルを作成し、同様に尿細管糖取り込み不全誘導後の、血流回復効果を検討する。腎線維化に対する抑制効果は腎毛細血管網保護によるものであったが、他臓器に対する効果もそうであるとは限らない。上記血管障害モデルにおいて、SGLT2阻害薬が無効であった場合、モデルを臨床により近い(糖尿病性)心不全モデルに変更する。我々は、SGLT2阻害薬の交感神経に対する作用も確認しており、神経系と心不全への作用も検討する。
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