腎尿細管における糖取り込み調節が心腎血管障害へおよぼす影響を検討する。特に、SGLT2阻害薬による尿細管糖取り込みの神髄とそれによる細胞リプログラミングを検証し、心血管系への遠隔保護作用も解き明かすことを目的とする。予備実験として行っていた論文は2018年にKidney International誌に受理された。その発展形として、1)この現象の詳細な機序の検討、2)腎臓から他臓器への連関を介した心血管保護効果を示すかの検討を行った。1)の機序検討のために複数の培養近位尿細管細胞(mProx24およびprimary culture)を用いて、SGLT2とGLUT2の同時阻害あるいは培養上清中糖の除去によりVEGFAの発現が上昇すること、いずれかの阻害薬単体ではほとんど効果を示さないことがわかった。またこれは細胞外糖濃度の高低に影響を受けないこともわかった。In vivoにおいても、近位尿細管細胞における糖取り込み効率は血糖値の高低に影響を受けないことを見出した。次に2の検討では少なくともVEGFによる血管透過性の亢進は浮腫には影響していないこともわかってきた。げっ歯目では、投薬により全身の水含量が上がるとのデータは得られず、浮腫誘導の危険性は低いと思われる。しかし、糖尿病を有した状態で、他臓器において障害により脱落した毛細血管網に対するVEGFAあるいは血管新生因子の貢献は腎障害のモデルでは観察できず(大静脈から採取した静脈血中のVEGFA・血管新生因子の上昇が確認できず)、静脈血中の血管新生因子に大きな差を認めるものは発見できなかった。期間中にケトン体が大きな因子である可能性が他施設より報告された。
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