研究実績の概要 |
自己免疫疾患である多発性硬化症は、現在承認されている有効的な治療薬が、I型インターフェロン製剤および冬虫夏草の成分であり生理活性脂質であるS1Pのイ ンバースアゴニストFTY720とその類縁体のみであり、社会的充足率も十分ではない。薬効の高い新規化合物の作出が望まれる。そこで長崎大学独自の海洋微生物 ライブラリーを始めとする化合物ライブラリーにより多発性硬化症に薬効を持つ化合物の単離を目指す。初年度は、京都大学10,000化合物からIRF転写活性を促 進する1次スクリーニングから得た化合物に関して、濃度依存性を確認した。残念ながら、濃度依存性を示したものは0個だった。合成化合物ライブラリーを240 化合物、海洋微生物、真菌や植物由来の抽出物ライブラリー160個に変えて行なったが、スクリーニングを実施したところ、IRF転写活性を促進するものは見つか らなかった。当初、カウンターアッセイのために用意したNFkB-SEAPでもスクリーニングを実施しており、天然物抽出物から免疫賦活能を保持する抽出物を得る ことができ、濃度依存性も確認できた。ヒットした抽出物を有機溶媒層と水層に分画して、評価したが、薬効が消失してしまった。しかしながら、NFkB-SEAP細 胞を改良し、エピソーマルベクターにより、IL-18RacpおよびIL-18R1から成るIL-18受容体を恒常的に発現させることによりIL-18シグナルを特異的に検出する新 たな系を樹立した。IL-18シグナルを変化させる抽出物および化合物を同定できた。培養細胞やマウスを使った高次検証の準備を行っている。現在、拡充した海洋微生物および化合物ライブラリーを用いて、1次スクリーニングを再々度行っており、IRFを活性化する化合物を探索している。
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