研究課題/領域番号 |
18K06897
|
研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
坂本 多穂 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (80433150)
|
研究分担者 |
黒川 洵子 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (40396982)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 骨格筋 / 性差 / 性ホルモン / 炎症 / 敗血症 / リポ多糖 / 炎症性サイトカイン / カヘキシー |
研究実績の概要 |
敗血症では細菌感染による過剰な免疫応答が契機となり、重篤な多臓器不全が引き起こされる。骨格筋も敗血症の影響を大きく受ける臓器であり、四肢と呼吸筋の筋力低下は予後悪化と死亡率上昇に直結する。敗血症の予後には顕著な性差がある。更年期前の女性は男性と比較して、敗血症の死亡率が低く、炎症性サイトカインも低値である。女性ホルモンによる炎症性サイトカイン分泌抑制が考えられるが、女性ホルモンによる炎症性サイトカインは組織・細胞種によりまちまちである。本研究では骨格筋における炎症性サイトカイン産生に対する性ホルモンの効果を解析した。
敗血症の後遺症として筋萎縮が発生し、呼吸機能低下と運動障害を引き起こす。我々は、敗血症死亡率の性差に着目し、グラム陰性菌の内毒素リポ多糖(LPS)による骨格筋炎症反応における性ホルモンの作用を検討した。C2C12細胞を5日間かけて筋分化させたのち、女性ホルモン(17βエストラジオール、プロゲステロン)と男性ホルモン(テストステロン)存在下で2日間培養した。LPSで刺激し、2時間後に回収したサンプルの炎症性サイトカインTNFαとIL6のmRNA発現量をリアルタイムPCRで解析したところ、エストラジオールにより炎症性サイトカインの有意な発現低下が認められた。LPS刺激により、筋特異的ユビキチンリガーゼatrogin-1が誘導されるが、E2はatrogin-1発現抑制効果を示さなかった。LPS刺激によるC2C12分化筋管の萎縮はE2により部分的に抑制された。以上よりE2は炎症性サイトカイン抑制を介してLPSによる筋萎縮を緩和することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度内に女性ホルモンの一種エストラジオールによる筋線維萎縮抑制効果とその機序を解析するうえでカギとなる炎症性サイトカイン抑制効果を見出すことに成功したから。
|
今後の研究の推進方策 |
エストラジオールの敗血症性筋萎縮の抑制効果が、動物レベルでも見られるか解析する。マウスを対照(Sham)群と卵巣切除(OVX)群にわけ、それぞれにLPS注入あるいは盲腸結紮穿孔によって敗血症を発症させて、両群における筋萎縮について比較する。また必要に応じてOVX群にエストラジオールを補充して、その効果を調べる。 エストラジオールによる炎症性サイトカイン抑制メカニズムについて明らかにするため、エストロゲン核内受容体(ERα,β)とGタンパク質共役型エストロゲン受容体(GPER)の特異的阻害薬をもちいて薬理学的に標的受容体を絞り込み、siRNAあるいはCRISPR/Cas9システムによる遺伝子ノックアウト法により、標的受容体を決定する。 さらに上記で判明した受容体作用薬が細胞・動物レベルにおける敗血症性筋萎縮を抑制するか検討し、創薬の可能性を追求する。
|