研究課題
本研究者は、ゲフィチニブによるオートファジー調節が、その主たる分子標的であるEGFRを介した作用ではないことを明らかとし、さらに、ゲフィチニブによるオートファジー調節に関わる分子標的候補としてGAKを見出した。そこで本研究では、「TKIsによるオートファジー調節作用に関する分子機構の解明」を第一の目的とし、平成30年度には、1)GAK発現を抑制することにより、細胞あたりのオートファゴソーム数が増加すること、および2)GAKはオートファジーフラックスに対して抑制的な作用を示すことを明らかとし、また、マススペクトル解析により、3)細胞内でGAKと結合するタンパク質、および4)GAKとは別に、TKIsによるオートファジー調節作用に関わる候補因子を複数同定した。令和元年度には、以下の解析を行った。1)オートファジーフラックス評価用プローブGFP-LC3-mCherry-LC3ΔGの安定導入株を樹立・解析することで、GAK-KO細胞では、オートファジー阻害剤Bafilomycin A1による阻害効果が弱く、オートファジー誘導剤Rapamycinによる誘導作用が遅いことが示された。2) オートファゴソーム・オートリソソーム形成を可視化するためmCherry-GFP-LC3の安定導入株を用いた経時的なアッセイを行い、GAK-KO細胞では、飢餓誘導後に蓄積するオートリソソームの数が多いことが示された。3)免疫染色法により、LAMP2陽性のリソソーム(あるいはオートリソソーム)のサイズが大きく、細胞全体に散在することが示された。以上よりGAK-KO細胞では、オートファジーフラックスが遅滞していることが示唆され、リソソームの機能あるいは再生過程の障害がその原因として考えられた。
2: おおむね順調に進展している
オートファジー調節作用の分子標的候補GAKに関する解析が順調に進んだため、新規スクリーニングについては保留にして、GAKとリソソームとの関連に焦点を絞り、詳細を詰めている。神経変性疾患との関連については手が付けられていないものの、解析の過程で、がんの進展との関連が見いだされ、計画を微修正しながらも、ほぼ計画通りの進捗状況となった。
解析が進行しているGAKについて、オートファジー調節に関わる分子メカニズムの解析を進め、神経変性疾患などに対する「オートファジー誘導療法」確立に向けた検討も行う。それとともに、がんとの関連についても解析を進め、ゼブラフィッシュやモデルマウスでの検証も行う予定である。
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Biochemistry and Biophysics Reports
巻: 22 ページ: 100750
10.1016/j.bbrep.2020.100750
Journal of Diabetes Investigation
巻: in press ページ: in press
10.1111/jdi.13214
http://www.tokyo-med.ac.jp/target/