研究課題
ADP-リボシル化は筋肉細胞のタンパク翻訳後修飾の一つでありADP-リボシル化修飾酵素が標的タンパク質にADP-リボースを付加することで、そのタンパク質の機能が変化することで生理機能を発揮する。ADP-リボシル化修飾反応は細胞膜表面にADP-リボシル化修飾酵素であるADP-ribosyl-transferase1 (ART1) が、標的タンパク質のアルギニン残基にADPリボースを付加することで生じ、ADP-ribosylarginine-hydrolase1 (ARH1)でADP-リボースが加水分解されることで終結する。Trim72は筋肉及び心筋細胞に存在する筋特異的タンパク質であり筋損傷後の細胞膜再構築に作用する。C2C12 (Mouse myoblast cell line) 細胞は、低栄養条件下myotubeに分化しTrim72を発現する。ARH1欠損マウスの研究によりTrim72がART1によりADP-リボシル化されると細胞膜修復が抑制されることが明らかとなっているが、詳しい作用機序は解明されていない。そこで本研究は、細胞膜修復抑制機構を解明することを目的とする。HEK細胞にTrim72およびART1を発現させると、Trim72のADP-リボシル化修飾が促進した。ストレプトリジン-O (SLO) により細胞膜に障害を加えると、Trim72が膜周辺へ移行した。一方で、ART1を共発現させるとTrim72が、細胞膜への移行が抑制された。これらの結果から、ART1によるTrim72のADP-リボシル化修飾反応は、細胞膜修復を担うエキソサイトーシスを抑制することで、細胞膜修復を抑制することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
Trim72の細胞内局在がART1によるADP-リボシル化レベルによって調節されていることを明らかにできた。
ART1によるTrim72のADP-リボシル化が、細胞膜修復を担うエキソサイトーシスを抑制する分子メカニズムを解明する。免疫沈降法やプルダウンアッセイを用いてTrim72と相互作用するタンパク質、例えばカベオリンとの結合がTrim72のADP-リボシル化レベルによって変化するのかを調べる。
研究を進めていくうえで必要に応じて研究費を執行し予定通りの研究を進めていった。残額が少額だったため、未使用額として記載した。
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International Immunopharmacology
巻: 82 ページ: 106306~106306
10.1016/j.intimp.2020.106306
巻: 81 ページ: 106276~106276
10.1016/j.intimp.2020.106276