研究課題
ADP-リボシル化修飾反応はNAD+のADP-リボシル基を標的タンパク質に付加する反応である。ADP-リボシル化修飾反応を受けた標的タンパク質はその活性および局在を変化させ、生理機能が発揮される。ART1はモノADP-リボシル化転移酵素であり、筋肉細胞に発現する。MG53は筋肉細胞に特異的に発現し、細胞膜修復に関わる。ART1はMG53をモノADP-リボシル化修飾し、細胞膜修復を促進することが明らかとなっている。一方、非筋肉細胞において細胞膜修復機構にADP-リボシル化反応の関与は明らかになっていない。本研究では、非筋肉細胞であるヒト胎児腎細胞 HEK293T細胞において、ADP-リボシル化修飾反応の細胞膜修復機構への関与を検討した。HEK293T細胞において、細胞膜障害を受けた細胞の割合はストレプトリジンO (SLO) 濃度依存的に増加し、死細胞を除く細胞全体のPI蛍光強度もSLO濃度依存的に増加したことから、SLOは細胞膜障害を引き起こすことが明らかとなった。また、SLOによる細胞膜障害を受けた細胞の割合は非選択的PARP阻害薬PJ34添加により減少し、死細胞を除く細胞全体のPI蛍光強度もPJ34添加により減少したことから、PARPは細胞膜障害を促進することが明らかとなった。加えて、biotin-NAD+と結合するStreptavidin-dylightの蛍光強度はSLO条件下で細胞内で増加し、PJ34添加により抑制されたことから、細胞膜障害が起こるとADP-リボシル化反応が行われることが明らかとなった。以上の結果から、HEK293T細胞においてSLOによる細胞膜障害が起こると、PARPによるADP-リボシル化修飾反応が起こり、細胞膜障害を促進することが示唆された。
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