研究課題
日本において現在、少子高齢化が社会問題になりつつある。加齢によって発症頻度が高くなることが知られている神経変性疾患として、難治性運動機能障害のパーキンソン病、およびアルツハイマー病とは異なる認知症のレビー小体病などがある。パーキンソン病およびレビー小体病などのシヌクレイノパチーの患者において、α-シヌクレインは脳内に凝集・沈着することが報告されている主要なタンパク質である。神経細胞内のα-シヌクレイン凝集に関して、昨年度構築したヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞におけるα-シヌクレインの凝集を呈する評価系を用いて、プロファイルを解析した。ヒトSNCA遺伝子を安定的に過剰発現したSH-SY5Y細胞に対してα-シヌクレインのpre-formed fibrils(PFFs)を処置することで細胞内にα-シヌクレインの凝集が誘導されるが、このとき形成された凝集体はチオフラビンT陽性のβ-シート構造を有する凝集体であり、また抗リン酸化α-シヌクレイン抗体陽性であることが判明した。また、α-シヌクレインは神経細胞から放出されたのち、ミクログリアによって取り込まれることが報告されている。マウスミクログリア細胞株BV-2細胞は細胞外に処置したところ、PFFsを細胞内に取り込んだ。取り込んだα-シヌクレインを定量化したところ、処置後2時間をピークとして徐々に減少する結果が得られた。このことから、ミクログリアはα-シヌクレインの取り込み後に分解を行うことが示唆された。また、昨年度着手したマウス脳内にPFFsを投与し、凝集・伝播を呈するモデルマウスの作成に関してα-シヌクレインの凝集・伝播など、投与条件や評価方法を検討中である。
2: おおむね順調に進展している
In vitroの評価系において、評価系のプロファイルを解析することに時間を要したが、確立できた。In vivoのモデルに関しては、脳内でα-シヌクレインの凝集が観察されるまでにPFFsの投与から6ヶ月を要するため現在、実験条件を検討中である。
2年目までに確立したプロファイルを解析した評価系を用いてDJ-1結合化合物の薬理作用を評価する。神経細胞に対する作用として、ヒトSNCA遺伝子を高発現したSH-SY5Y細胞対してPFFsを処置した際の細胞内α-シヌクレインの凝集形成に対するDJ-1結合化合物の作用を解析する。ミクログリアに対する作用として、マウスミクログリア細胞株BV-2細胞に対してPFFsを処置することで細胞内へα-シヌクレインが取り込まれる。これに対してDJ-1結合化合物が促進作用を持つか調べる。さらに、マウス脳内でα-シヌクレイン凝集体が形成される条件を確立し、これに対してDJ-1結合化合物が抑制作用を示すか調べる。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) 図書 (2件) 備考 (2件)
J. Alzheimers Dis.
巻: 73 (1) ページ: 413-429
10.3233/JAD-190974
http://www.ritsumei.ac.jp/ph/educators/detail.html/?id=27
http://research-db.ritsumei.ac.jp/Profiles/118/0011784/profile.html