研究課題/領域番号 |
18K06906
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
米山 雅紀 摂南大学, 薬学部, 准教授 (00411710)
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研究分担者 |
山口 太郎 摂南大学, 薬学部, 講師 (30710701)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 内耳前庭 / 平衡感覚障害 / 有毛細胞 / ギャップ結合 |
研究実績の概要 |
【目的】平衡感覚障害は加齢に伴い発症し、日常生活動作に著しい悪影響を及ぼすことから”生活の質”の低下が懸念され、超高齢化社会を迎えた我が国において、非常に重要視されるべき疾患である。平衡感覚は内耳の有毛細胞により受容され、その機能維持にギャップ結合が作り出す膜迷路内のイオンバランスが重要とされるが、その詳細は不明である。前年度にマウスの内耳内にギャップ結合阻害剤カルベノキソロン(CBX)を局所投与すると平衡感覚異常が惹起されることが明らかとなった(平衡感覚機能障害モデルマウスの作成に成功)。本研究では、同モデルマウスでのギャップ結合機能と平衡感覚異常との関わり合いについて解析した。【方法】4週齢ddY雄性マウスの内耳内にCBXを後半器官から局所投与し、平衡感覚機能障害モデルマウスを作成した。同モデルマウスの前庭卵形嚢について、ギャップ結合構成タンパク質であるコネキシン26および30の発現を免疫組織化学法により解析した。続いて、同モデルマウスでの前庭卵形嚢のギャップ結合機能に対するギャップ結合阻害薬の影響について、光褪色後蛍光回復法により解析した。【結果】免疫組織化学法の結果、マウス前庭卵形嚢ではギャップ結合構成タンパク質であるコネキシン26および30の発現が認められた。続いて、光褪色後蛍光回復法により、対照群のマウス前庭卵形嚢では正常な蛍光の回復が認められた。しかしながら、CBX処置により作成した平衡感覚機能障害モデルマウスでは、CBX処置1日後の前庭卵形嚢においてレーザー照射による蛍光の回復は対照群と比べて有意に低かった。【考察】以上のことから、CBX処置による平衡感覚機能障害モデルマウスでは内耳前庭卵形嚢のギャップ結合機能が低下することが明らかとなった。前年度の結果と併せて考えると、前庭卵形嚢におけるギャップ結合機能と平衡感覚障害には強い関りがあることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ギャップ結合阻害薬であるカルベノキソロン(CBX)の内耳内投与により作成した平行感覚機能障害モデルマウスについて、詳細な解析を行った。その結果、モデルマウスの前庭卵形嚢ではギャップ結合の機能低下が明らかとなった。また、前年度の結果と併せて考えるとCBX処置による平衡感覚異常はギャップ結合機能の低下後に惹起されることが推察され、前庭におけるギャップ結合と平衡感覚機能の関りが強いことが示唆されたため、予定通り、平衡感覚機能におけるギャップ結合の役割について順調に解析を進められている。
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今後の研究の推進方策 |
平衡感覚機能障害モデル動物でみられる平衡感覚機能の異常と前庭ギャップ結合の機能障害との関わりを明らかにする。また、前庭ギャップ結合の破綻と有毛細胞の機能維持について解析する。さらに、同モデル動物の個体機能と前庭有毛細胞に対する薬物(神経栄養因子、抗酸化剤、カルパイン阻害剤)の影響を解析 し、障害された有毛細胞の機能を予防・回復・維持させる薬物を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の拡大によって、小規模ではあるが予定していた実験の中止を余儀なくされたため
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