研究課題
【目的】平衡感覚機能障害は加齢に伴い発症し、日常生活動作に著しい悪影響を及ぼすことから”生活の質”の低下が懸念され、超高齢化社会を迎えた我が国において、非常に重要視されるべき疾患である。平衡感覚は内耳前庭の有毛細胞により受容され、その機能維持にギャップ結合が作り出す膜迷路内のイオンバランスが重要とされるが、その詳細は不明である。前年度までにカルベノキソロン(CBX)を内耳内に局所投与して作成した平衡感覚機能障害モデルマウスの前庭卵形嚢では、ギャップ結合機能が低下していること並びに有毛細胞の形態に異常がみられることを明らかとした。本研究では、同モデルマウスでのギャップ結合機能低下および平衡感覚異常に対する抗酸化薬の影響について解析した。【方法】4週齢ddY雄性マウスの内耳内にCBXを後半器官から局所投与し、平衡感覚機能障害モデルマウスを作成した。同モデルマウスに抗酸化薬であるtempolおよびNアセチルLシステイン(NAC)を腹腔内投与し、前庭卵形嚢のギャップ結合機能と個体機能(平衡感覚機能)に対するtempolおよびNACの影響について解析した。【結果】光褪色後蛍光回復法の結果、tempolおよびNAC処置はモデルマウス由来の前庭でのレーザー照射による蛍光の回復を対照群と比べて有意ではないものの促進させる傾向が認められた。一方、同モデルマウスの個体機能を評価するために尾懸垂試験を行ったところ、tempolおよびNAC処置はいずれも平衡感覚異常を改善させなかった。【考察】以上のことから、抗酸化薬であるtempolあるいはNACがCBX処置による平衡感覚機能障害モデルマウスのギャップ結合機能の低下を抑制することが推察された。すなわち、平衡感覚機能障害が抗酸化作用をもつ薬物処置によって改善する可能性が示唆された。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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http://www.setsunan.ac.jp/~p-yakuri/