研究課題/領域番号 |
18K06910
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
葛西 秋宅 弘前大学, 医学研究科, 助教 (20609664)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | GCN1L1 / アミノ酸飢餓応答 / ミトコンドリアストレス / GCN2 / eIF2α / ATF4 |
研究実績の概要 |
リボソーム結合タンパク質であるGCN1L1はアミノ酸飢餓に応答して翻訳開始因子eIF2αをリン酸化するGCN2を活性化し、翻訳を抑制する一方でアミノ酸合成・輸送に関わる遺伝子の発現を誘導する。この応答経路はミトコンドリア異常によっても活性化し、ミトコンドリアの恒常性維持に関わる遺伝子群の発現を誘導することが明らかになったが、その活性化機構については不明な点が多い。GCN1L1-GCN2を介したミトコンドリアストレス応答を解明するため、GCN1L1をノックアウトしたHAP-1細胞を用いて、種々のミトコンドリアストレス誘導剤への応答を解析した。その結果、ミトコンドリアの翻訳を阻害するdoxycyclineによってATF4活性化が見られ、GCN1L1ノックアウト細胞では一部抑制されたが、継代が進むにつれ差が見られなくなった。ミトコンドリアストレスによってはGCN1L1-GCN2経路以外にもPERKやHRIといったeIF2αキナーゼの関与が報告されており、条件によって別経路が活性化を補完している可能性が考えられた。 GCN1L1 floxマウスの戻し交雑およびCre-ERT2マウスとの交配は問題なく進んでおり、タモキシフェンの腹腔内投与によりGCN1L1 floxアリルの欠失をジェノタイピングPCRで検出できている。今後、GCN1L1 floxおよびCre-ERT2のホモ個体を使用してノックアウト後の表現型を解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HAP-1細胞を用いた解析については再現性の問題で解析が遅れているものの、GCN1L1のRWDBDドメインを欠失したノックアウトマウス由来の胎児線維芽細胞(MEF)を用いた解析ではGCN1L1依存的にeIF2αリン酸化を誘導するミトコンドリアストレス誘導剤を見出しており、レンチウイルスベクターを用いたGCN1L1発現の準備を進めている。 GCN1L1条件付きノックアウト(CKO)マウスの作成については順調に進んでおり、CN1L1 flox::Cre-ERT2マウスについてはホモ個体が得られたため、タモキシフェン投与後の表現型解析およびノックアウト効率の評価に進む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
培養細胞を用いたミトコンドリアストレスシグナルおよびGCN1L1のドメインの解析についてはMEFを用いて解析する予定である。レンチウイルスで導入するプラスミドベクターは構築済みであり、GCN1L1 RWDBD欠損MEFに導入して、アミノ酸飢餓応答が回復するか解析する。また、GCN1L1の変異体も作成し、アミノ酸飢餓およびミトコンドリアストレスへの応答を解析する。 GCN1L1 flox::Cre-ERT2マウスのMEFは培地に4-ヒドロキシタモキシフェンを添加することでGCN1L1をノックアウトできるため、GCN1L1の野生型および変異体の発現および内在性GCN1L1をノックアウトした細胞を作成し機能解析を行う。 GCN1L1 CKOマウスについては戻し交雑を継続するほか、Cre-ERT2マウスとの交配で作成したGCN1L1 flox::Cre-ERT2マウスにタモキシフェンを投与し、表現型の解析と各臓器でのノックアウトの効率を評価する。
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