研究課題/領域番号 |
18K06911
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
白壁 恭子 立命館大学, 生命科学部, 教授 (00345315)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | シェディング / 選択的スプライシング / 接着分子 / ADAMファミリー |
研究実績の概要 |
膜タンパク質を切断して細胞外領域を可溶化するシェディングは、細胞間のシグナル伝達を絶対的に制御する分子機構であるが、その制御機構には不明な点が多い。これまでの研究で我々は、2つの接着分子CADM1とALCAMのシェディング感受性が、全配列の3%にも満たない短い選択的エキソンの有無により180度転換するという意外な事実を明らかにしている。更にCADM1の選択的エキソンがコードするアミノ酸配列が、細胞外の糖鎖修飾部位と細胞表面との間の距離を伸ばすことでCADM1をシェディング感受性にしていることも明らかにして報告した。当該年度は接着分子ALCAMの選択的エキソンがシェディングを阻害する分子機構について解析した。まず、この選択的エキソンがコードするアミノ酸配列には糖鎖修飾を受けうるセリン残基が2つ存在したので、それらを糖鎖修飾を受けないアラニン残基に置換した所、シェディング耐性に変化はなく、CADM1と異なりALCAMのシェディング感受性は糖鎖修飾によって制御されるのではないことがわかった。次に選択的エキソンがコードするアミノ酸配列に酸性アミノ酸が多いことに注目し、これらの酸性アミノ酸を全て中性アミノ酸に置換した所、シェディング耐性から感受性へと変化することがわかった。塩基性アミノ酸への置換は更にシェディング感受性を亢進した。また塩基性アミノ酸に置換した変異体ALCAMの切断部位を特定した所、膜から15アミノ酸付近であることが明らかとなった。酸性アミノ酸が膜から15アミノ酸付近に集中していることと考え合わせると、ALCAMの選択的エキソンはシェディング切断部位近傍に酸性アミノ酸を挿入することでシェディング耐性を付与していることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ALCAMの選択的エキソンがコードする酸性アミノ酸がシェディングを阻害することを明らかにすることができた。さらに、シェディング感受性のALCAMスプライシングバリアントと、シェディング耐性のALCAMスプライシングバリアントにアミノ酸置換を加えシェディング感受性にした変異体とで、シェディング切断部位と膜表面との距離がほとんど一致することも明らかにした。これらの結果から、シェディングを担うADAMファミリープロテアーゼが膜から一定の距離の範囲で切断するという性質があることと、切断部位近傍に酸性アミノ酸が多いと切断できなくなることを明らかにすることができたと考えている。以上の成果から、ALCAMの選択的スプライシングがシェディング感受性を制御する分子機構について明らかにすることができたので、予定通り研究が進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は選択的スプライシングによってCADM1やALCAMのシェディング感受性が制御される分子機構の機能的意義に迫っていきたい。具体的にはCRISPR/Cas9を用いて、選択的エキソン欠損細胞を構築し、細胞接着や運動に変化が見られるか検討する。また選択的エキソンを挟んだfloxマウスも存在するので、生体内での役割を明らかにしていきたいと考えている。一方で研究計画に記したように同様に選択的スプライシングでシェディング感受性が制御される他の膜タンパク質についての研究も進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度終わりの消耗品の消費が予想と異なったため。
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