研究課題
血小板はプラーク破綻時の血栓形成だけでなく動脈硬化自体の進行にも関与することが知られている。これまでGPIbなどの血小板上受容体の抗体やノックアウトマウスに動脈硬化進展抑制効果が確認されているが、出血傾向の助長が問題であった。私たちが同定した血小板活性化受容体CLEC-2は、そのノックアウトマウスにおいて、血栓形成は抑制されるが出血傾向は認められないという利点がある。加えて、ヒトおよびマウスの頸動脈プラーク内に集積したマクロファージには、CLEC-2のリガンドであるPodoplanin(PDPN)やS100A13が発現しており、プラーク形成に血小板CLEC-2が関与する可能性を考えた。高脂肪食でアテローム性動脈硬化を起こすApoE欠損マウスに抗CLEC-2抗体を投与したところコントロール抗体投与群に比べて有意にプラーク面積が抑制され、血小板CLEC-2が”出血傾向を伴わない動脈硬化抑制”のターゲットになる可能性が示唆された。本研究では、血小板CLEC-2欠損が動脈硬化進展を抑制するメカニズムを明らかにする。今年度は、血流中の白血球でのPDPNの発現や血小板/白血球の接着について解析した。CLEC-2野生型ApoE欠損マウスの単核球でのPDPNの発現および血小板の接着をフローサイトメトリーで解析した。高脂肪食により動脈硬化を誘導したApoE欠損マウスでは単球の10-20%にPDPNの発現が認められ、20-50%の単球が血小板と接着していた。また、全単核球に占める単球の割合が増加していた。一方TおよびBリンパ球ではPDPNの発現や血小板の接着はほとんど認められなかった。これらの結果から、血小板CLEC-2が単球PDPNと結合し、血小板活性化及び血小板/単球接着を誘導して内皮下への浸潤を起こし動脈硬化を増悪させるという新たな動脈硬化進展のメカニズムが考えられた。
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