研究課題/領域番号 |
18K06913
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
森田 強 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (80403195)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 線維化 / コラーゲン / トランスジェニックマウス |
研究実績の概要 |
慢性的な炎症を伴う臓器では、コラーゲンなど線維性結合組織の過剰な蓄積がしばしば観察され、その結果臓器の硬化性変性による機能障害、機能不全に至る。本来、損傷組織の正常な修復・再生過程の一環として線維芽細胞の活性化に伴う結合組織の合成亢進が生じるが、これが炎症の慢性化などにより過度に進行することが原因であると考えられる。このような状態を組織の線維化とよび、生活様式の変化に伴って日本人の死因における線維化疾患が占める割合は上昇傾向にある。しかし、不可逆的な変化であるこの組織線維化に対する有効な治療法はまだ確立されていない。最近私は、結合組織の恒常性を司る因子としてthymosin-β4というタンパク質を見出した。これまでの解析から、thymosin-β4は組織線維化に対して促進的/抑制的な相反する活性を持ち合わせており、両者のバランスが破綻することにより損傷組織の恒常性が保てなくなり線維化が引き起こされると考えられる。本研究では、遺伝子改変マウスを用いて組織線維化におけるthymosin-β4の機能を詳細に解析し、線維化の予防や治療への応用を目指している。本年度は、thymosin-β4のノックアウトマウス(KO)および遺伝子改変マウス2系統(S2AD3A, L17A)を作成し、実験に必要な個体数を維持するために繁殖を行った。これら遺伝子改変マウスでは、thymosin-β4の細胞内および細胞外における機能を独立に欠損できるようにthymosin-β4タンパク質のアミノ酸配列に変異を導入しており、組織線維化におけるthymosin-β4の機能を詳細に検討できるように設計されている。これらのうちKOマウスおよびS2AD3Aマウスに関しては、既にある程度の個体数が維持できるようになったため、四塩化炭素を投与することで肝硬変を誘発しthymosin-β4遺伝子改変による影響を検討中である。一方、L17Aマウスはまだ個体数が少ないため実験には用いず交配を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
作成したマウスを飼育している実験動物飼育施設を変更したこともあり、ノックアウトおよび遺伝子改変マウスの作成、交配に少し遅れが生じていたが、現在は作成予定であった3系統のマウス全てにおいて概ね順調に飼育・交配が行われており、個体数も増加しつつある。また、一部のマウスに関しては四塩化炭素投与による肝硬変誘導実験を予備実験として行っており、概ね計画通りに研究が進行していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
現在飼育している3系統のマウスに関して、そのうちの一系統が出産後早期に死んでしまうことが多く、個体数を確保するのが難しい状況にある。そこで、体外受精で一度個体数を増やした後に、系統維持・実験を行いたいと考えている。3系統とも十分な個体数が維持できるようになったならば、当初の計画どおり肝線維化、肺線維化、腎線維化などを薬剤により誘発させ、系統間における線維化の進行度合いの違いなどを比較・検討してゆく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究者の所属変更に伴い若干の研究の遅れが生じたこと、また予定していた学会に参加しなかったことなどから繰り越し金が生じた。しかし、研究自体は順調に進行しており、本年度行う予定であった実験は次年度に行うことが可能であるため、予算もそれに当てる計画である。
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