研究課題/領域番号 |
18K06915
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
宇山 徹 香川大学, 医学部, 助教 (30457337)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | cPLA2ε / N-アシル-ホスファチジルエタノールアミン / 脂質代謝酵素 / N-アシルエタノールアミン / カルシウム |
研究実績の概要 |
N-アシル-ホスファチジルエタノールアミン (N-アシル-PE) は生体膜を構成する微量なリン脂質であり、脂質メディエーターとして知られるN-アシルエタノールアミンの前駆体としても機能する。N-アシル-PEはN-アシル転移酵素によってグリセロリン脂質のアシル基がPEのアミノ基に転移されることで合成され、最近、細胞質型ホスホリパーゼA2ε (cPLA2ε) がCa2+依存的に同活性を示す酵素として同定された。しかしながら、細胞レベルでヒトのcPLA2εがどのようなN-アシル-PEを生成するのかはほとんど不明であった。そこで本研究では、ヒトcPLA2εを恒常的に発現するHEK293細胞を樹立し、同酵素によって合成されるN-アシル-PEや関連する脂質分子を細胞レベルで検討した。Ca2+イオノフォアであるイオノマイシンによってcPLA2ε発現細胞を処理すると、N-アシル-PEがコントロール細胞と比較して13倍以上にまで増加した。液体クロマトグラフィー・タンデムマススペクトロメトリーによる分析より、N-アシル基に飽和または一価不飽和脂肪酸を含むN-アシル-PEが著増していた。これと並行して、sn-2位に多く存在する多価不飽和脂肪酸を含むリゾリン脂質が増加していたことから、cPLA2εは主としてリン脂質のsn-1位の脂肪酸をPEに転移していることが示唆された。また、N-アシルエタノールアミンも17倍以上増加しており、そのアシル基組成はN-アシル-PEと同様の傾向を示した。以上の結果から、ヒトcPLA2εはCa2+依存的に主としてリン脂質のsn-1位に結合している飽和および一価不飽和脂肪酸を転移してN-アシル-PEを生成し、その一部がN-アシルエタノールアミンの生成に用いられることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたcPLA2ε発現細胞を樹立し、同細胞を用いることでcPLA2εの細胞レベルでの機能解析行った。液体クロマトグラフィー・タンデムマススペクトロメトリーによる脂質分析の結果から、どのような脂質分子が変動するかを明らかにすることが出来た。これより、おおむね順調に実験が進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最近見出した知見を報告できるよう研究を進める。また、予定している研究で着手できていない部分があるので、これについても同様に進める。具体的には、N-アシルエタノールアミンの食欲抑制作用の解析をマウスを用いて個体レベルで検討する。また、マウスに高脂肪食を摂取させることで関連する脂質代謝酵素にどのような変化を生じるかを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究の進捗状況に一部遅れがあり、また、購入してきた試薬の見積額より購入額が低い等の理由により未使用の経費が生じた。これ対する使用計画として、次年度に遅れが出た当該実験を行う予定にしており、適宜経費を使用する。
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