研究課題
真核生物における複雑な細胞機能は、オルガネラが正しく働くことにより維持されている。ところがオルガネラは、細胞が受けるストレスが原因となり機能低下を呈してしまう。そのため細胞には、オルガネラ機能低下を軽減・予防するためのさまざまな機構が備わっている。本課題は、異なるオルガネラの情報交換(オルガネラクロストーク)を介したオルガネラ品質管理機構の分子メカニズム、生理的意義を解明することを目的としている。当該年度までに明らかにした点を下記にまとめる。①小胞体膜局在型キナーゼPERKがミトコンドリアストレスを受容して自己リン酸化非依存的にリン酸化が亢進される、② PERKのSer715、Ser717、Ser719(以下3S)のリン酸化がミトコンドリアストレスにより亢進される、③ PERKの3Sのリン酸化は褐色脂肪前駆細胞が成熟褐色脂肪細胞への分化過程でも誘導される、④ 成熟褐色脂肪細胞の分化過程におけるPERKの3Sのリン酸化はミトコンドリアの生合成に必要不可欠である、⑤ PERKの3Sのリン酸化は成熟褐色脂肪細胞のUCP1を介した熱産生にも必要不可欠である、⑥ PERKノックアウトマウスでは寒冷環境下における熱産生能が低下する。①から⑥の知見により、PERKを介したミトコンドリア-小胞体間のクロストークは、ミトコンドリアの機能維持に重要な役割を担っており、恒温動物における体温維持するための仕組みが明らかになった。将来、この機構を標的とした肥満や種々の代謝性疾患克服のための治療戦略の創出に繋がることが期待される。
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Life Science Alliance
巻: 3 ページ: e201900576
10.26508/lsa.201900576.