研究課題/領域番号 |
18K06919
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
高橋 巌 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (20552912)
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研究分担者 |
山田 修平 名城大学, 薬学部, 教授 (70240017)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | インスリン分泌 / シンデカン4 / ヘパラン硫酸 |
研究実績の概要 |
マウスの膵臓ランゲルハンス島(ラ島)β細胞(膵β細胞)の表面には直鎖の高分子多糖であるヘパラン硫酸糖鎖が発現しており、インスリン分泌やラ島の形態形成、膵β細胞増殖に関与している。ヘパラン硫酸はコアタンパク質に結合したプロテオグリカンの形で存在しているが、マウス膵β細胞由来の培養細胞を用いた研究から、インスリン分泌に関与するヘパラン硫酸の土台となるコアタンパク質がシンデカン4(Sdc4)であることを見出している。昨年度の主な成果として、生体内におけるSdc4の膵β細胞機能における役割を解析したところ、C57BL6系統の8週齢雄のSdc4ノックアウト(KO)マウスでは、インスリン分泌能の低下を伴う耐糖能異常が認められたことを報告した。本年度では以下の成果について報告する。 C57BL6系統の8週齢雄のSdc4KOマウスのラ島におけるヘパラン硫酸量が野生型と比べ増加しており、さらに加齢とともに増加することが判明した。従って、8週齢雄のSdc4KOマウスにおけるインスリン分泌機能障害はSdc4以外のコアタンパクに結合しているヘパラン硫酸ではその機能障害を代償できないことが判明した。 8週齢雄のICRマウスに低用量ストレプトゾトシン(STZ)を投与することで緩徐進行性糖尿病モデルを作製できるため、通常では耐糖能に異常を示さないICR系統のSdc4KO雄マウスにSTZを投与したところ、野生型マウスでは投与後4週後から随時血糖値の上昇が認められたが、Sdc4KOマウスではSTZ投与後1日後から随時血糖の上昇が認められた。さらに、STZを投与したSdc4KOマウスでは随時インスリン分泌量の減少や膵臓/ラ島あたりのβ細胞の割合が低下していた。 これらの結果から、系統間による程度の差は認められるもののマウス生体内における膵β細胞機能にSdc4が関与していることが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
C57BL6系統のSdc4KOマウスの出生率が低く、研究に必要な個体数を得ることが困難であったが、交配数を増やすことで生化学・分子生物学的解析について徐々に成果が得られている。一方、ICR系統Sdc4KOマウスについてはC57BL6系統で認められた出生率低下が顕著ではないことから、マウス生体内の膵β細胞機能におけるSdc4の関与について順調に解析できている。
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今後の研究の推進方策 |
C57BL6系統のSdc4KOマウスについては今後も交配数を増やすことでラ島/膵β細胞機能の解析に必要な個体数を確保し研究を進める。ICR系統のSdc4KOマウスについてはバッククロスが完了しているため、研究結果に応じた解析を柔軟に対応していく。
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