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2019 年度 実施状況報告書

膜受容体PGRMC1の構造的知見を基盤とした生理機能の解明と制御化合物の解析

研究課題

研究課題/領域番号 18K06921
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

加部 泰明  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (20397037)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード金属タンパク質 / ヘム / 天然有機化合物 / 癌 / 脂質代謝
研究実績の概要

本研究では、これまでに新規のガス応答性因子として同定した膜タンパク質PGRMC1の構造的機能制御の解明を行った。X線結晶構造解析により、PGRMC1はチロシ ン残基のヘム配位によって、突出したヘム同士が重なり合った特異な重合体構造を形成することを見出し、生体内ガスCOがこの重合が解離してPGRMC1の機能を阻 害することを見出した。PGRMC1はがん細胞内のヘム濃度に応答して重合化することにより活性化し、がん増殖に関わるEGFRや薬物代謝酵素シトクロームP450 (CYP3A4)などと会合してがん増殖シグナルを増強し薬剤耐性を亢進するという、ダイナミックな構造変換によって機能することを明らかとしている(Nature Commun 2017、Pharmocol Res 2018)。これらの知見は、PGRMC1を標的とした新たな抗癌治療薬の創出に繋がる可能性が考えられ、PGRMC1を指標としたケミカル スクリーニングを進め、いくつかの天然由来の有機化合物がPGRMC1のヘムダイマー構造を特異的に認識して結合することを見出している。
今年度の成果としては、これらのPGRMC1を標的と した候補化合物について、抗腫瘍活性の検証を細胞レベルおよびマウス癌移植モデルを用いた解析を行い、顕著な抗腫瘍効果を示す化合物をいくつか見出し、より作用の強い化合物の選定に進んでいる。さらに、PGRMC1が脂質の代謝や取り込みにも効果を示すことを見出しており、薬剤がこのような作用を抑制することも見出している。今後、PGRMC1の癌増殖作用を指標とした抗癌治療薬の開発を目指すとともに、PGRMC1が示す脂質代謝活性化機能を指標とした新たな創薬展開についても目指して行きたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究では天然有機化合物ライブラリーを用いたスクリーニングによりPGRMC1に結合する薬剤についていくつか候補化合物を見出すとともに、これらの化合物に顕著な抗癌活性を示すことも見出している。構造活性相関の解析から、さらに作用の強い化合物の選定に進んでいる。また、PGRMC1の機能解析を進めることにより、PGRMC1が脂肪酸合成および脂質の細胞取り込みを増強するという新たな生理機能を見出すことが出来た。

今後の研究の推進方策

上記のように、PGRMC1に結合するいくつか候補化合物の選定に成功しており、これらがPGRMC1を介した癌増殖作用を阻害して抗腫瘍活性を示すことを明らかとしている。これまでにPGRMC1はEGFRシグナルを増強することにより癌増殖および薬剤耐性作用を示すことを見出しているが、これらの候補化合物がこのような機能に影響を示すか検討を行い、薬剤の作用メカニズムを解明する。また、PGRMC1の新たな機能として脂質の代謝や取り込みの促進効果を見出している。これはリポタンパクであるLDL受容体の機能を制御することにより、細胞内への脂質の取り込みに寄与することを見出しており、今後はこれらの候補化合物における脂質代謝に関わる作用を検証するとともに、脂質取り込みを介した癌増殖への効果および肥満モデルなどのメタボリックシンドロームへの作用を検証することにより、独自のPGRMC1の構造情報を基盤とした化合物の選定を進めて行きたい。またこれらの候補化合物の抗腫瘍効果について、PGRMC1を指標とした作用を介した、癌種特異的な作用について検証を進めて行きたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

当該年度はすでに収集を行っていた候補薬剤の解析を行い、細胞モデルおよび動物モデルについては既に構築した実験系により評価を行ったため、さらなる創薬合成展開や新たな評価系構築のための予算を次年度に繰り越した

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Annexin A1 accounts for an anti-inflammatory binding target of sesamin metabolites.2020

    • 著者名/発表者名
      Kabe Y, Takemoto D, Kanai A, Hirai M, Ono Y, Akazawa S, Horikawa M, Kitagawa Y, Handa H, Rogi T, Shibata H, Suematsu M.
    • 雑誌名

      npj Science of Food

      巻: 4 ページ: eCollection

    • DOI

      10.1038/s41538-020-0064-6

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Xanthine oxidase inhibitor ameliorates postischemic renal injury in mice by promoting resynthesis of adenine nucleotides.2019

    • 著者名/発表者名
      Fujii K, Kubo A, Miyashita K, Sato M, Hagiwara A, Inoue H, Ryuzaki M, Tamaki M, Hishiki T, Hayakawa N, Kabe Y, Itoh H, Suematsu M.
    • 雑誌名

      JCI insight

      巻: 4 ページ: 124816

    • DOI

      10.1172/jci.insight.124816

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Environmental Optimization Enables Maintenance of Quiescent Hematopoietic Stem Cells Ex Vivo.2019

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi H, Morikawa T, Okinaga A, Hamano F, Hashidate-Yoshida T, Watanuki S, Hishikawa D, Shindou H, Arai F, Kabe Y, Suematsu M, Shimizu T, Takubo K.
    • 雑誌名

      Cell Reports

      巻: 28 ページ: 145-158

    • DOI

      10.1016/j.celrep.2019.06.008

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Application of high-performance magnetic nanobeads to biological sensing devices.2019

    • 著者名/発表者名
      Kabe Y, Sakamoto S, Hatakeyama M, Yamaguchi Y, Suematsu M, Itonaga M, Handa H.
    • 雑誌名

      Anal Bioanal Chem.

      巻: 411 ページ: 1825-1837

    • DOI

      10.1007/s00216-018-1548-y

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Development of a medical application using nano-beads technology2019

    • 著者名/発表者名
      Yasuaki Kabe
    • 学会等名
      The 92nd Annual Meeting of the Japanese Biochemical Society
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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