本邦では少なくとも130人に0.9人の希少疾患の患者が存在する。また、希少疾患は全体の4割、いまだ3400疾患ほどが未解明のままである。このような社会的背景から未解明な希少疾患を解決するニーズは高い。しかし、ヒトゲノムの少なくとも4%はお互いに配列が極めて似ているため、従来手法では解析法が確立していない (高難度ゲノム領域問題)。この問題に対して、本研究では申請者が開発した、高難度ゲノム領域で起きるゲノム構造異常に注目した解析手法を発展させる。そして、未解明な希少疾患症例のゲノム解析に応用し、これまでの従来手法では見過ごされてきた新しい原因遺伝子を明らかにすることを目的とした。 本研究の初年度では、通常のエクソーム解析からは同定が難しいゲノム構造異常を検出する手法を改良し、ゲノム全体へ適用できるよう開発を行った。通常、高難度ゲノム領域では次世代シークエンスは不完全な解析結果となる。本手法は高難度ゲノム領域で頻発する相同組換えによる欠失に注目し、シークエンス深度が極端に喪失している情報を元にホモ欠失領域を同定する。また、同時にエクソーム解析で検討されることが少ない一エクソン単位での微小なゲノム欠失へのアプローチについても検討を行った。具体的にはゲノム欠失の探索でよく使われる種々のツール (主に read-count 及び softclip アプローチに立脚する) と全ゲノム・全エクソームシークエンスデータの組み合わせから、微小なゲノム欠失の検出される状況を探索した。結果からは、全ゲノムシークエンスにおいても、性質の異なるツール (read-count 及び softclip アプローチ) を複数のパラメーターセッティングで探索を行う必要があると考えられた。 (本課題は代表研究者の研究機関外への異動によりこの年度を持って廃止となった)
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