腸管の上皮細胞に特異的に発現しているホメオボックス転写因子であるCDX2やCDX1により、腸管上皮細胞のオートファジーが活性することや、オートファジーの活性化を介して、上皮細胞に浸潤した細菌の増殖を抑制することが分かった。そこで、その分子機構を解明するために、CDX2のdeletion変異体や、homeodomain変異体を作成した。その結果、ホメオドメインに変異を導入した転写活性欠損型のCDX2は、オートファジー反応の中心分子であるATG7への結合が野生型CDX2よりも強くなることや、オートファジーを活性化することが分かった。この結果と一致して、CDX2のホメオドメインのみの変異体でも、ATG7に結合できることが分かった。これらのことから、CDX2は、転写活性を介した機能ではなく、転写活性に依存しない機能により、オートファジーを活性化していることが分かった。また、CDX2とATG7の野生型や活性中心への変異を有するATG7C572Sを用いた免疫沈降実験により、CDX2は、LC3と結合しているATG7にとくに強い親和性を示すことなどが分かった。これらのことから、CDX2は、ATG7によるLC3のホスファチジルエタノールアミン化などの反応に、関与している可能性が分かった。 一方で、CDX2の発現を誘導して、cDNAマイクロアレイを行ったところ、オートファジーの関連遺伝子の発現が上昇することが分かった。このことから、CDX2は、転写活性を介した機能と、転写活性を介さない二つの経路により、オートファジーを強力に活性化することが分かった。 実際に、転写活性欠損型のCDX2によっても、腸管上皮細胞に感染した細菌の細胞内増殖が抑制されることが分かった。しかし、野生型のCDX2の方が、転写活性欠損型のCDX2よりも、強く、細菌の細胞内増殖を抑制することが分かった。
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